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完成当時の外観や室内の凝った意匠を保ってきた洋館。保存・活用を目指し、塩野才治さん(左)と話す「住宅遺産トラスト関西」の笠原一人、原田純子両理事=神戸市東灘区(撮影・小林良多)
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完成当時の外観や室内の凝った意匠を保ってきた洋館。保存・活用を目指し、塩野才治さん(左)と話す「住宅遺産トラスト関西」の笠原一人、原田純子両理事=神戸市東灘区(撮影・小林良多)
「旧」ジョネス邸」の鏡を活用した美容院。地域の歴史を伝える=神戸市垂水区神田町6
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「旧」ジョネス邸」の鏡を活用した美容院。地域の歴史を伝える=神戸市垂水区神田町6

 神戸・阪神間の洋館をはじめ、兵庫県内には文化的・歴史的に価値のある住宅が今なお残る。しかし、住宅の維持は所有者の負担が大きく、保存に困難が伴うのが現状だ。こうした建物の継承を支援しようと、建築・法律・不動産の専門家が今月、一般社団法人「住宅遺産トラスト関西」(大阪市北区)を設立した。一方、解体された建物の記憶を残そうと、部材を再利用する取り組みも進んでいる。(田中真治、松本寿美子)

 神戸市東灘区の本山地区。木造3階建て、築92年の洋館が建つ。設計は、登録文化財の松山大学温山(おんざん)記念会館(西宮市)を手掛けた木子七郎(きごしちろう)。戦前は宮地汽船の迎賓館となり、約50年前に塩野才治(さいじ)さん(86)の義父が購入し、住み始めた。

 「保存状態がよく、これだけの建築を再現することは難しい」と専門家の評価も高いが、公開されたことはほとんどなく、その価値は一部でしか知られていなかった。

 阪神・淡路大震災を乗り越えたが、転居。固定資産税や維持費が重い負担となった。売却話も再三あったが、建物が解体され分譲地となることに、「大事にしていたのに忍びない」と抵抗感を覚えた。

 そんな洋館を塩野さんから託された長女(52)も途方に暮れた。結婚後に暮らす東京から毎月、手入れに通う。愛着のある家も、長女は「私の子どもの代には負担しかない」と心配する。「大切にしてもらえるところに譲りたくても、どこに相談していいか分からない」

 巡りあったのが、トラスト関西だった。

 「保存のあり方は個別に違い、所有者に寄り添うことが必要」と原田純子理事。トラスト関西と塩野さん親子は歴史的価値を共有し、神戸市の指定文化財になった場合、固定資産税の減免を受けられることを確認した。

 「近隣の大学などと活用を図れないか」と理事の笠原一人(かずと)・京都工繊大助教が、京都の先行例をもとに助言。新たな継承者に譲るとなれば、トラスト関西の弁護士や不動産会社の出番だ。

 歴史的建築物の保存に取り組むNPO法人「アメニティ2000協会」(西宮市)は、阪神・淡路大震災以前の資料を基に2002~04年、神戸市東部、西宮、芦屋市で戦前の建築物を調査。3割超がなくなり、住宅では約4割に上ることを確かめた。10年から再調査しているが、「住宅はさらに減った印象だ」という。

 こうした危機的状況は全国で起きている。関西トラストは、建築と社会をつなぐ、新たな仕組みを模索。兵庫県内の最初の取り組みとして、最善の解決策に知恵を絞っている。

■旧ジョネス邸の部材再利用 神戸の美容院

 昨年9月、神戸市垂水区のJR垂水駅近くにオープンした美容院「ブリスト ジョネス」。店内には一昨年秋、マンション建設に伴い解体された大正期の洋館「旧ジョネス邸」(同区塩屋町1)にあった鏡や扉、大窓、床板など計12点が使われている。重厚な装飾の鏡に、女性客が「私なんかが映っていいの?」とはにかむ。

 同区で生まれ育った店長の豊島(とよしま)晋太郎さん(33)は「もったいないという思いで活用を申し出た。部材があることで、お客さんに旧ジョネス邸や洋館が多く残る街を話すきっかけになりますね」と語る。

 保存運動に取り組んだ住民団体「旧ジョネス邸を次代に引き継ぐ会」が、部材や家具を工務店の協力で保存。将来に同邸復元の可能性を残し、無償で貸与している。

 美容院のほかにも神戸の帽子店やワインバー、真珠店、京都のシェアハウスなど計7カ所に貸し出し、全量の4分の1ほどがインテリアなどとして利用されている。

 同会代表の森本アリさん(41)は「活用しながら保存する取り組み。部材を通じて地域の歴史的建築を守る意識が高まればうれしい」と話している。

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