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 兵庫県は1966~74年、「不幸な子どもの生まれない県民運動」を推進した過去がある。

 「不幸な子ども」を中絶や死産に加え、知的、身体などの障害児と定義。70年には対策室を設置した。障害者団体の抗議を受けて廃止するまで、遺伝病の予防や障害者のリハビリなど幅広い施策を展開し、他府県から視察が相次いだという。

 県健康増進課は「当時の国の母子保健施策に沿った運動。障害者に不幸な存在とレッテルを張るのは今なら許されない」と話す。

 戦前には、障害児の出生の抑制を目的とした国民優生法(戦後は優生保護法)があった。96年、優生思想に基づく強制断種などの条文が削除され、母体保護法に改正されたが、経済的困窮や母体保護を理由にした中絶は今も認められている。

 医療の進展で新たな問題も起きている。妊婦の血液から胎児のダウン症などを調べる新出生前診断が可能になり、2016年3月までの3年間で3万人超が受診。研究チームの調査では、染色体異常が確定した妊婦の94%(394人)が中絶を選んだ。

■当事者の声

 私たちも好きで障害を手にしたわけじゃない。ハンディが大きいからこの世に存在することは許されず、健全な人だけが人間と認められるのは変だ。私たちの声、言い分も聞いてほしい。私たちも健全な人の声を聞いてみたい。(芝田鈴さん、49歳。知的障害=神戸市中央区)

 事件の容疑者は言葉で私たちも殺した。わが身に起きても不思議のない事件。健常者の差別感情はいつも感じる。外食すれば半分ぐらいの店で迷惑そうな顔をされる。(住田雅清さん、59歳。脳性まひ=西宮市)

 着床前診断や出生前診断は障害者を選別する優生思想。ずっと反対してきたが、障害者の分際で何を言っているのか、と反発される恐怖が常にある。健常者は心の中の差別感情と向き合ってほしい。(石地かおるさん、48歳。脊髄性筋萎縮症=神戸市兵庫区)

■記者の視点

 相模原で起きた事件と、一般の人たちの差別感情を結びつけることに違和感や反発もあるだろう。私自身、高齢出産となった妻が妊娠したとき、出生前診断が頭をよぎった。

 今の「競争社会」を変えようがない現実と受け止めるなら、障害児を産むのはできれば避けたい、という気持ちを否定するのは難しい。

 だが、施設で暮らす障害者や支える人たちの笑顔、その心の豊かさは、取材で一時的に知る程度の私にも伝わってくる。本当に寛容で居心地がいい。

 山田さんはコラムの最後に「こっち(障害者と共に生きる社会)の方がおもしろい。その価値観、共感を広げたい」と書いた。

 怒りを抱きながら、笑顔で前へ進む人がいる。〈あっち〉より〈こっち〉を選ぶ社会を目指したい。(木村信行)

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