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治安維持法下の空気を語る加藤太郎さん=神戸市東灘区渦森台
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治安維持法下の空気を語る加藤太郎さん=神戸市東灘区渦森台

 「心の中まで取り締まられる」。衆院法務委員会で19日、強行採決された組織犯罪処罰法改正案。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設するため、政府は週明けにも衆院通過を図る。法案の危険性を訴えてきた兵庫県内の人たちからは、反対や怒りの声が上がった。

 「自由をなくした経験がない若い人にこそ、あの時代を伝えたい」。神戸市東灘区の加藤太郎さん(92)は「共謀罪」法案に戦前・戦中の監視社会を重ねる。

 加藤さんは1941年、神奈川県の横須賀海軍工廠(こうしょう)に入った。私物検査が頻繁にあり、ある日、仲の良かった同僚の持ち物から「天皇機関説」に関する書籍が見つかった。

 憲法学者・美濃部達吉(高砂市出身)が唱え、天皇を国の最高機関と位置付ける学説。広く定着していたが、35年に一変した。「国体に反する」と軍部による糾弾が激しくなり、美濃部の学説に基づく著作は発禁処分に。政府も学説を断罪する声明を出した。

 「どんな学説なのかも知らなかった。同僚も特定の思想を持っていた様子はなく、おとなしい人だった」

 加藤さんたちの目の前で、同僚は寄宿舎の責任者から入手先を問い詰められ、殴られ続けた。

 直後、同僚はいなくなった。「憲兵に引き渡されたらしい」。うわさが広がったが、すぐにかん口令が敷かれた。以来、消息は分からない。

 「見せしめやったんでしょうな」。加藤さん自身も自由を縛るようになった。「『こういうことをしたらいかん、言っちゃいかん、読んじゃいかん』と自然に思い始めた」と振り返る。

 「法律ができたら、がんじがらめになる」。言葉を振り絞った。(段 貴則)

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