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「色彩豊かな神戸だからこそ、多様な色のインクができる」と話す竹内直行さん=神戸市中央区、NAGASAWA神戸煉瓦倉庫店
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「色彩豊かな神戸だからこそ、多様な色のインクができる」と話す竹内直行さん=神戸市中央区、NAGASAWA神戸煉瓦倉庫店
新作の「東遊園地トーチオレンジ」と「住吉山手ジェイドグリーン」。箱も神戸らしさにこだわる
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新作の「東遊園地トーチオレンジ」と「住吉山手ジェイドグリーン」。箱も神戸らしさにこだわる

 神戸の街並みや景色を色で表した万年筆のインク「神戸INK(インク)物語」が、誕生から10年を迎えた。開発の舞台裏には、阪神・淡路大震災からの復興に携わったある男性の強い思いがある。60色余りの一つ一つにストーリーを込めたインクは国内外から注目を集め、手書き文化の普及にも一役買っている。(久保田麻依子)

 ナガサワ文具センター(神戸市中央区)商品開発室長の竹内直行さん(62)。明石市で生まれ、中学で神戸に移り住んだ。自然豊かな街並みに魅了され、散策やカメラが趣味になった。

 40歳を前に「神戸らしい文具を作りたい」と考えていたとき、震災が街を襲った。神戸・三宮センター街の店舗も被害を受け、店の再開と復興で精いっぱい。「変わり果てたまちの姿を前に、シャッターが押せなくなった」

 10年余りが過ぎ、「震災でお世話になった方々にお礼の手紙を」と思い立った時、万年筆のインクの開発を決意した。再生したまちの色も表現したい、と2007年に産声を上げたのは、海と山に囲まれ、モダンな街を象徴する「六甲グリーン」「波止場ブルー」「旧居留地セピア」の3色。黒と青が主流の当時は「誰が使うのか」と社内外から厳しい声もあったというが、珍しさや発色の良さが評判を呼び、イラストやテストの採点に使う人も出てきた。

 湊川ライム、神戸レンガ、北野オリーブグリーン…歩いて見て感じた景色や、地域の人との触れ合いから色を着想する。「同じ場所でも時間や天気、季節で色が違う」といい、薄紫の「神戸ヒメアジサイ」は雨の森林植物園(神戸市北区)に通い詰めて生み出した。

 毎年六つずつ新色を出し、現在は64色を常時販売。約30の国や地域から注文を受け、インクを求めて台湾から買いに来る若い女性も多い。

 震災から22年が過ぎた。「私ならではの復興に関われたかな」。長年一人でやってきたが、「若手社員から『そろそろ関わらせてほしい』と言われ、意見を取り入れるようになりました」と苦笑する。ここ数年は市民からのリクエストやワークショップで生まれる色が増えたという。

 「手書きの文字にはその人の気持ちが表れる。若い人にもその醍醐味(だいごみ)を味わってほしい」。歩き回る体力がある限り、新色を作り続けていくつもりだ。

 1色1944円(50ミリリットル)。ナガサワ文具センターTEL078・321・5600

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