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建設現場で壁の装飾に汗を流す左官職人、横田威さん=芦屋市内
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建設現場で壁の装飾に汗を流す左官職人、横田威さん=芦屋市内
姫路城の「平成の大修理」で、大天守にしっくいを塗る左官職人。文化財の維持には欠かせない存在だ=2013年7月、姫路市本町
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姫路城の「平成の大修理」で、大天守にしっくいを塗る左官職人。文化財の維持には欠かせない存在だ=2013年7月、姫路市本町

 高齢化や新規就業者の減少などで、左官職人が激減している。国土交通省によると、全国の職人は約40年前のピーク時の10分の1にまで減少。神社仏閣や城郭の修復などを支える技術を次世代へ引き継ごうと、兵庫県内では人材育成の動きも始まった。近年では、職人の仕上げるデザイン性が高い装飾のニーズが高まり、その技術を生かした住宅も人気を集めている。(末永陽子)

 芦屋市内の住宅建築現場。加古川市在住の左官職人、横田威(つよし)さん(36)が、もう1人の職人と一緒に外壁を鮮やかな手さばきで塗り上げていく。2種類のこてを操り、凹凸のある模様を完成させた。横田さんは「家の“顔”になる部分を担当するのは、やりがいを感じる」と汗をぬぐった。

 左官は、建物の壁をしっくいやモルタル、壁土などで塗り上げる仕事。従来は下地づくりがほとんどだったが、昨今は技を生かした仕上げ工事が見直され、住宅以外にも美容院やカフェなどに需要が広がっている。

 横田さんが勤めるマツウラアートクラフト(加古川市)には左官職人4人が所属する。自らも職人の松浦卓也社長(42)は、仕上げ工事のできる職人を育て“下地屋”からの脱却を図ってきた。「知識と技術に加えてセンスも求められ、仕事の幅は広がっている」と胸を張る。

 住宅業界では左官によるデザインが注目を集める。

 エコ住宅などを手掛ける東邦レオ(大阪市)は、外壁の表面を職人が仕上げる外張り断熱システム「エコサーム」を売り出している。多彩なデザインと、断熱材による高い省エネ効果を誇り、順調に売り上げを伸ばしているという。

 同社は、提携している全国の職人約300人を対象に実技講習を定期的に開き、技術継承にも力を入れる。担当者は「こて技術を生かしたデザインは『和モダン』として人気が高い。技術継承にも一役買えれば」と話す。

 国交省の調査では、高度経済成長期の1975年ごろに30万人いた左官職人は、2014年には約3万人まで減少した。さらに、一般社団法人建設経済研究所によると、左官就業者の平均年齢は53歳。4割を60歳以上が占める。

 兵庫県左官工業協同組合(神戸市)には現在、約50人が加盟。未加盟の個人業者もおり具体的な数字は把握していないが人手不足に直面する業者は多いという。

■習得に10年、「塾」も開設

 技術習得に10年かかるともいわれる左官仕事。職人が激減する中、若手の育成は業界全体の課題だ。

 職人の育成を目指し、兵庫県左官工業協同組合と西宮市の左官山本組などは、2015年から「左官山本塾」を始めた。

 塾生は社員として働きながら、座学や現場での実習を半年間、週2回ずつ重ねながら、左官技能士の資格取得を目指す。県の職業訓練校にも認定され、これまで9人が卒業したが、17年度は入塾者がゼロだった。

 塾長を務める山本健さん(54)は「以前は弟子入りして見よう見まねで始めたところを、講座でしっかり知識を学べる。後世に残る仕事の魅力を広めたい」と話す。8月から来年度の希望者の募集を始める。

 神社仏閣や城郭の修復にも左官の技術は欠かせない。

 15年3月に「平成の大修理」を終えた世界文化遺産・国宝姫路城。半世紀に1度の大修理では、全国各地から集まった左官職人が3年かけて仕上げた。しっくいを強く美しく保つ工夫など、随所に匠(たくみ)の技が光る。「技術の鍛錬や継承に果たした意義は大きい」と関係者は評価する。

 一方で、人材不足への危惧も募らせる。「また50年後に大修理をするとき、左官職人がどれくらい残っているだろうか。後進の育成が急務だ」

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