総合 総合 sougou

  • 印刷
絵本を通じて再会した大内有子さん(前列左から2人目)と神戸YWCAのメンバー=神戸市中央区二宮町1
拡大
絵本を通じて再会した大内有子さん(前列左から2人目)と神戸YWCAのメンバー=神戸市中央区二宮町1
絵本のモデルになった猫。梨の木でくつろぐのが好きだった(大内さん提供)
拡大
絵本のモデルになった猫。梨の木でくつろぐのが好きだった(大内さん提供)

 福島市で果樹園を営む大内有子さん(58)からこの冬、神戸YWCA(神戸市中央区)に絵本が届いた。東日本大震災の原発事故から6年半余り、食の安全と放射能汚染を巡り、議論と交流を重ねてきた間柄だ。「言葉では伝えきれない思いが一冊の絵本に結実した」。神戸YWCAのメンバーはそう受け止める。(木村信行)

 届いたのは「トントンのようちえん」。女の子と雄猫の物語だ。

 〈おいらのなまえはトントン ふくしまの なしのはたけでうまれたよ とくいなことは まつこと〉

 そこへ、津波にのまれた海辺の町からサッカー好きの元気な女の子がやって来る。ある日、女の子は猫に秘密を打ち明ける。祖母と妹がまだ見つからないこと。泣きたいけど、ずっと我慢していること。猫は語りかける。

 〈キズのある なしはね とってもあまくなるんだよ キズをなおすために えいようがいっぱい あつまるから とびきりおいしくなるんだって〉

 その夜、女の子は長い夢を見る--。

 文は大内さん、絵は福島市のイラストレーターさいとうゆみさん(20)。英訳を付けたら、フランス、オーストラリア、ベラルーシにも読者が広がった。

 大内さんの果樹園は、福島第1原発から約65キロにある。風向きや雨の影響で放射線量が局地的に高くなる「ホットスポット」が周辺に点在した影響もあり、出荷先は激減した。

 復興支援の道を探っていた神戸YWCAは2011年夏、福島で土地を再生する道を選んだ大内さんの果樹園を何度も訪ね、除染の取り組みを見学。放射能の勉強会を重ね、大内さんの梨を取り寄せた。

 「安全の確証がない」と神戸のイベントで出品を断られたこともあるが、地道に販路拡大に協力した。

 果樹園の梨の木は300本。毎年、専門の検査機関に出しているが、6年間で放射性物質が検出されたことは一度もない。丁寧な梨作りが共感を呼び、定期購買者は震災前の50人から200人に増えた。

 「遠く離れた神戸に応援団がいる。どれだけ励みになったか」と大内さん。

 絵本の主人公にはモデルがいる。

 震災から間もなく、1匹の猫が果樹園にすみ着いた。大内さんは、人には話せないことも猫になら話せた。「私を心配して来てくれたのかな」。何年目かに姿を見せなくなった。

 浪江町に知人の女の子がいた。津波で祖母と妹を失った。福島からの避難者がいじめを受けたニュースに衝撃を受け、自分が福島出身であることを隠して関西の大学に通っている。経験は今も語らない。

 「絵本なら、子どもたちの閉じた心を表現できるかも。福島から心を支える復活の物語を発信したい」。絵本づくりに奔走した。

 1作目を完成させた大内さんは、グループ「ふくしま夢絵本BEES」を設立。今後、若者の表現の場として活用していくという。

 神戸YWCAの寺内真子・責任幹事は「大内さんの梨は、私たちが放射能の問題と関わっていくという決意の梨だった。阪神・淡路を体験した神戸の人にもつながる物語だ」と話す。

 1500円。ふくしま夢絵本BEESのホームページか大内果樹園(ファクス024・556・0363)

総合の最新
もっと見る

天気(9月23日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 50%

  • 30℃
  • ---℃
  • 50%

  • 32℃
  • ---℃
  • 30%

  • 32℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ