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補導委託の少年少女たちが中村大蔵さんの元に書き残した手紙や詩=尼崎市小中島1
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補導委託の少年少女たちが中村大蔵さんの元に書き残した手紙や詩=尼崎市小中島1

 兵庫県尼崎市の特別養護老人ホーム「園田苑」で10代半ばの少年と出会った。きゃしゃで色白。お年寄りにほほ笑んでいて、爽やかな少年に見えた。彼には非行歴があり、家庭裁判所からこの施設に「補導委託」されている。施設の理事長、中村大蔵さん(73)は約23年、補導委託先として約80人の少年少女の更生と向き合ってきた。園田苑で補導委託の現場を見詰めた。(小谷千穂)

 中村さんが受け入れを始めたのは1995年5月。阪神・淡路大震災後、まだ被災地が混乱しているときだった。神戸家裁からの依頼に、「震災直後で裁判所も困ってるんやろうな」と二つ返事で引き受けた。

 家裁調査官に連れられてきた少年少女は約80人に及ぶ。薬物乱用や無免許運転、バイクの暴走行為や殺人未遂などで補導された15~19歳。3~4カ月程度、住み込んだり、通ったりし、一緒に生活する。

 少年たちの朝は早い。午前7時、施設周辺のごみ拾いから始まる。業務は午前9時から午後4時半、お昼休憩が1時間。介護士の補助として、食事を準備したり洗濯物を畳んだり、清掃やシーツ交換の仕事も担当する。お年寄りの話し相手も彼らの役目だ。

 中村さんは「朝まで遊び回ることが当たり前だった彼らにとっては、ルーティンの仕事は大変」と見守る。「しんどい」「めんどくさい」と文句を言いながらも真面目に取り組む姿が印象的だという。だが時には、深夜まで外出したり部屋でたばこを吸って窓の外にポイ捨てしたり。叱るとキレて物を投げたりするなど手を焼くこともあった。

 「施設になじめず、逃げ出すかもしれない」と弁護士に忠告されてやってきた少女もいた。だが少女はお年寄りとすぐに打ち解けた。園田苑での経験から、ホームヘルパーの資格を取った子もいる。

 少年審判の処分が決まり出て行く少年らに、中村さんはいつも作文を書かせる。手紙や感想文、詩など、それぞれが好きなように書くが、みな「ありがとう」という言葉を残している。「お年寄りから『ありがとう』と言ってもらえたのがうれしかった」という感想も多い。「たった5文字で、彼らは生き返る」と中村さん。人に感謝される経験が、少年らの自信につながると確信する。

 中村さんは1月末、約半年の受託を終え、あの色白できゃしゃな少年を見送った。中村さんのことを「おじいちゃんみたいな存在」と話す少年は、2月から建設業界で働き始めた。

【補導委託】窃盗や暴力、薬物などの非行があった少年らに対し、少年院送致や保護観察などの処分を決めるため、一定期間生活態度を見る「試験観察」の手段の一つ。民間の団体や個人の元で社会奉仕活動などを行う。委託先は製造業や農家、飲食店などを営む個人のほか、児童福祉施設や特別養護老人ホームといった施設や団体などさまざま。泊まり込みと通所の場合がある。非行少年を補導委託するかどうかは家庭裁判所が判断。家裁調査官が月に1回ほど受託者と少年に聞き取りをする。

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