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婚約指輪に触れながら原発事故からの歩みを語る女性=神戸市中央区
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婚約指輪に触れながら原発事故からの歩みを語る女性=神戸市中央区
避難者らが参加して開かれたヨガ教室=大阪市中央区大手前1
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避難者らが参加して開かれたヨガ教室=大阪市中央区大手前1

■復興曲線調査

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故後、兵庫などに避難した人らを対象にした関西広域避難者支援センターの復興曲線調査からは、孤立したり、深刻な悩みを抱えたりして生きる姿がうかがえる。震災から11日で7年。身近に暮らす避難者の苦しみに思いを寄せ、支援策を考えたい。

 兵庫県によると、県内には2月末時点で294世帯779人が避難しているという。避難前の居住地域は、福島県153世帯427人▽関東地区73世帯203人▽宮城県57世帯128人▽岩手県11世帯21人。

 兵庫県は総務省の全国避難者情報システム登録者に支援情報を送っており、避難者に対し「転居時などに届け出てほしい」と呼び掛ける。

■福島→兵庫 42歳女性 夫が自死、懸命に生きる

 「私、どうやって生きてきたんだろう」。福島県から兵庫県へ避難した女性(42)は、復興曲線を描こうとして、手が止まった。避難後に夫=当時(38)=が自死。それから1、2年は無我夢中で記憶がないという。描き始めた曲線は深く沈み、長く底をはった。

 事故前、英語講師だった夫、当時6歳の長女と3人で暮らしていた。原発建屋が爆発したニュースに、夫が県外避難を切り出し、一家3人で兵庫県へ移った。

 夫は兵庫県の企業に転職。突然の環境変化に戸惑い、先行きの不安から「眠れない」と漏らす日々が続いた。2011年11月、夫は自ら命を絶った。女性はその後しばらくの記憶がないが、通勤電車でつり革を握りながら涙があふれたことは覚えている。

 「いつまでも被害者と思ってたらだめだよ」。そんな周囲の言葉に傷ついた。14年、非常勤の仕事の期限が迫ると職探しに奔走。子どもを抱え「早く次の仕事を」と焦った。

 震災関連死の遺族にも支給される災害弔慰金の申請を知り、福島県内の窓口に問い合わせたが、「前例がない」とされ、断念した。

 仕事、子育てに忙しい毎日、ふと夫との思い出が脳裏に浮かぶ。婚約指輪をミルクティーが入ったカップに入れてプレゼントし、笑わせてくれた。今も身に着けている。「夢には今も出てくれる。一緒に笑い合えたはずなのに」

 ほかの自死遺族と交流し、支え合ってきた。転職先の仕事にやりがいも感じる。シングルマザーとして心細さもあるが、「娘がいるから前を向ける。絶対に守りたい」と、つらい思いをした長女を気遣い、懸命に生きる。

■福島→大阪 54歳女性 うつ経験、安心できる場所求め

 福島県田村市から大阪市に避難する女性(54)の復興曲線は、2016年から急激に落ち込んでいた。

 中国出身。結婚して福島県に住んだが、離婚。工場で働きながら長女を育てた。原発事故後、市が放射線量の注意を呼び掛けても「理解できなかった」。防護服姿の人が行き来するのを見て初めて恐怖を感じた。

 大阪で介護の資格を取って正社員となり、復興曲線は一時、震災前の水準を上回った。しかし、16年に職場でいじめに遭って休職。うつ状態になり苦しむ。17年3月末で住宅無償提供が打ち切られ、経済的な不安がのしかかる。

 心に傷を負い、周囲と打ち解けられない避難者も気軽に参加できるよう、支援団体「まるっと西日本」は、大阪市中央区のドーンセンターでヨガ教室を開く。今年2月の教室にはこの女性も参加。「これまで外出できなかったけれど、誘ってくれて感謝している」と笑みを浮かべた。

 開催を助言した関西学院大の池埜聡教授(54)=心的外傷学=は「心的外傷を受けた人は無力感から自分自身を否定する。ヨガは身体感覚をよみがえらせ、心と身体に余裕を生む」とし、安心できる場所をつくるため、さまざまな仕掛けの必要性を強調する。

 ヨガ教室(月2回)は、参加費500円。参加申し込みや各種相談は関西広域避難者支援センターTEL070・5340・9311

(小林伸哉)

【兵庫県立大大学院減災復興政策研究科の宮本匠専任講師】(復興曲線調査を指導・分析)

 避難者や家族の多くが、数年後に体調を崩していることが気に掛かった。さらに職を失う不幸の連鎖もみられた。阪神・淡路大震災などでも顕在化した「二番底」と呼ばれる状況だ。

 原発避難者の曲線は、周囲から理解されているかどうかで、激しく揺れ動いているのが特徴といえる。「勝手に逃げた」「いつ帰ってくるの」。そんな周囲の何げない言葉が、避難者を傷つける。避難という選択や生き方を否定することになる。まず、その判断や存在を認める。そこが「復興」へのスタートラインになる。

【関西広域避難者支援センターの古部真由美事務局長】

 避難後の経済苦から仕事を掛け持ちし、健康を害したシングルマザーらの相談を受けてきた。避難者を「努力不足」などとする世間の偏見で支援を求めにくくなり、孤立している。被災地から遠い関西では、行政担当者らが支援制度を熟知せず、ニーズに応えきれていない。震災が原因で亡くなった人の遺族に支給される災害弔慰金▽無利子などで貸し出される生活復興支援資金-などの情報が届かず、困窮する人が目立つ。

 大規模災害では県外避難者が必ず生じる。「帰還ありき」の復興だけでなく「避難先で生活を立て直す」のも復興と認め、社会全体で支援策を整えてほしい。

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