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宙づりの太古の小石の周囲で、口笛を吹いたりして交信する3人のパフォーマー=国立国際美術館
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宙づりの太古の小石の周囲で、口笛を吹いたりして交信する3人のパフォーマー=国立国際美術館
祝砲パフォーマンスに用いた大砲などが並んだ「ジャパン・コウベ・ゼロ」の回顧展会場。紙や映像の資料が紹介された=兵庫県立美術館
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祝砲パフォーマンスに用いた大砲などが並んだ「ジャパン・コウベ・ゼロ」の回顧展会場。紙や映像の資料が紹介された=兵庫県立美術館

 天井からつり下げられた黒い小石の周囲で男女3人が口笛を吹いたり、石に息を吹きかけたり…。国立国際美術館(大阪市北区)で連日演じられているのは、開館40周年記念展の出品作の一つ「ライフスパン」。国内の国立美術館が初めて購入収集したパフォーマンスアートだ。「形のないアート」をコレクションする試みは、欧米では例があるが、国内ではまだ極めて珍しい。(堀井正純)

 美術品の収集保存は美術館の重要な役割の一つで、同館の所蔵品は約8千点。パフォーマンスの記録映像や写真などは収蔵していたが、パフォーマンス自体の収集例はなかった。

 「ライフスパン」は2人組の美術家アローラ&カルサディーラが手掛けた。40億年前の太古の石と、現代人3人が向き合う約15分の作品。ユーモラスな動きや口笛を鑑賞し、言語誕生以前のコミュニケーションのあり方などを考えさせる。

 2016年度に12万5千米ドル(約1500万円)で購入した。形があるのは、長さ7センチほどの自然石と口笛演奏の曲を記した楽譜のみで、いわば上演権を手にした形。実演にはパフォーマーが不可欠で、今回は18人を雇用した。「パフォーマーの確保など課題は多いが、展覧会終了後もある程度定期的に上演できれば」と同館の橋本梓主任研究員。欧米では、購入作品を日常的に披露する館もあるという。

 収集方法に関し、東京国立近代美術館の三輪健仁主任研究員は、演じる手順を記す「指示書」や上演時の動画、写真をセットで購入する例などがあるが、「美術界でまだ基準がなく、模索している段階」という。

 国立国際美術館の取り組みに対し、兵庫県立美術館(神戸市中央区)の小林公学芸員は「大変意義がある」と称賛。一方、公立美術館で実現する場合、絵や彫刻と違い形のないアートを税金で集めることに市民の理解を得られるか-などの課題を挙げ、「高いハードルがある」と実情を語る。

 同館はこのほど、神戸を拠点に1970年代に集団パフォーマンスを展開した前衛グループ「ジャパン・コウベ・ゼロ」の回顧展を開いたが、展示の主役はやはり、映像や印刷物など「形のある」資料だった。

    ◇

 金沢市が設置し、現代美術を扱う「金沢21世紀美術館」。04年の開館以来、国内では例外的に「形のない作品」を意識的に収蔵してきた。館内で上演した演劇作品や、人気画家奈良美智(よしとも)さんがデザインした子犬の着ぐるみを着て、児童らが館内を探検する体験プログラムなど、市民に好評を得たものを購入している。

 収集当時、同館学芸課長だった不動美里・姫路市立美術館副館長は「美術市場での商品価値とは無縁の作品もある。『行為』や『出来事』にも芸術的価値を見いだして収集保存し、未来へと委ねていくのが公設の現代美術館の使命だろう」と指摘する。

 形に残らないが価値あるアートを、作者の死後も50年先、100年先へとどう伝えていくか-。美術館も市民も考えねばならない時期を迎えつつある。

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