総合 総合 sougou

  • 印刷
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 旧優生保護法(1948~96年)に基づき障害者らに不妊手術が繰り返されていた問題で、神戸市と姫路市がまとめた当時の統計の件数が、兵庫県の統計と食い違うことが神戸新聞社の調べで分かった。理由は不明だが、神戸や姫路単独の件数が県全体を大幅に上回っている年があり、兵庫を網羅しているはずの県統計より、実際はさらに多くの手術が行われていた可能性がある。ただ基礎資料となる統計が定まらない上、手術を受けた個人を特定する記録も県内各市町で見つかっておらず、行政による実態解明は進んでいない。(まとめ・田中陽一、田中宏樹)

 旧法では知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に不妊手術を容認。本人同意がない場合も医師が必要と判断すれば、各都道府県の「優生保護審査会」の決定に基づき強制手術を可能としていた。

 厚生労働省の資料と県の「衛生統計年報」を基に神戸新聞社が集計したところ、県内では49~78年の30年間に少なくとも349件の強制手術が行われていた。しかし、当時保健所のあった神戸、姫路両市の年報を調べると、76年は神戸で「26件」と記録されていたが県の年報では1件、56年は姫路で「23件」だったが県では15件-と大きく矛盾していた。両市の記録が正しければ、県全体の件数はさらに増えることになる。

 ただ神戸市の担当者は「基になった資料がなく、当時を知る職員もいない。(県統計と)食い違う原因は分からない」。姫路市も「現時点の資料としては統計が全て。正確性も含め検証できない」と話す。

 神戸では56、57、65、75、76年の年報に強制手術の件数が残され、計53件。姫路では55~57年の3年間で計28件が計上されていた。これ以外に、統計の書式に強制手術の欄が設けられていない年もあるが、実際に手術が1件もなかったのか、統計の対象から外されていたのかは分からない。

 厚労省は4月下旬、被害実態を把握するための調査範囲を全国の市町村に広げ、関連資料がある場合は保存を要請したが、今のところ県内全41市町とも個人の特定につながる記録は見つかっていない。多くの自治体が「かつてあったとしても、保存期限切れや自治体合併の影響で既に廃棄されている」との見方を示す。

 一方で、手術を受けたとみられる個人名記載の資料が役所以外で保管されているケースもあり、東京で都立病院、茨城県では障害者支援施設から見つかった。西脇市の市立西脇病院も「当時なら紙のカルテが残っている可能性はある。指示があれば調べる」とする。

 市川町は「文書の検索システムでは見つからず、保存されている可能性は低い」とする一方、「調査の要請があれば補正予算を組み、町広報やチラシで情報を募る方法なども考えられる」としている。

■自治体にも責任、独自調査を

【立命館大学生存学研究センターの利光恵子客員研究員の話】 自治体の記録と厚生労働省の資料とで手術件数が異なるケースが相次いでおり、正確な数字を把握していなかった国の姿勢には憤りを感じる。ただ自治体にも手術を積極的に進めた責任がある。実態を明らかにするため、自治体は医療機関や福祉施設にまで範囲を広げて調査すべきだ。第三者的な検証委員会の立ち上げや、当時働いていた職員や医師らから聞き取りをすることも必要。第三者委があれば被害者からの相談にも対応ができ、弁護団との連携が取りやすくなることも考えられる。

【旧優生保護法】 「不良な子孫の出生防止」を掲げ1948年に施行され、障害などを理由に本人同意のない不妊手術を認めた。ハンセン病患者も同意に基づき手術された。国は当時、身体拘束やだました上での手術も容認する通知を出していた。96年に差別的条項が削除され、母体保護法に改正された。国会では超党派の議員連盟が発足するなど救済の動きがあり、これまでに計4人が損害賠償を求めて国を提訴。さらなる広がりも見込まれている。

総合の最新
もっと見る

天気(11月19日)

  • 16℃
  • 12℃
  • 60%

  • 15℃
  • 10℃
  • 80%

  • 17℃
  • 12℃
  • 60%

  • 16℃
  • 11℃
  • 50%

お知らせ