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神戸市中央区、のらまる食堂(撮影・吉田敦史)
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神戸市中央区、のらまる食堂(撮影・吉田敦史)

 世の中に長寿雑誌は数あれど、個人のフリーペーパーでコンスタントに続いているものはなかなかない。神戸在住の倉本高弘さんが発行する「月刊かえる」は、今年でなんと31年を迎えた。カエルの話題はどこにもなく、中身は丸ごと、アンダーグラウンドな音楽・カルチャーだ。投稿は手書きのものが多い。ものみなデジタル化していく時代に、手間暇のかかる紙での発信をどのように続けてきたのだろうか。(田中真治)

 -333号記念インタビューのつもりが、次号が出てしまい…。それにしてもすごい数です。

 「きっちり毎月の発行ではないけど、この記事が掲載される頃には335号が出てるはず。1号が出たのは1987年3月。知り合いがメールアートみたいなことをしてて、表現活動をしている知人間のやりとりをまとめて郵送していた。それを引き継いだ形です」

 -即興音楽や実験音楽関係の人の寄稿が多い。

 「高校時代はプログレッシブ・ロックが好きで、福岡の大学時代にデレク・ベイリーやフレッド・フリスら即興演奏家が来日して。ライブ会場で知り合った人の誘いで、妹のお下がりのクラリネットをでたらめに吹いて一緒に遊ぶようになった。即興って、瞬間ごとに刺激があるのが面白い。82年に就職で関西に引っ越してからは、自分で企画もするようになって、フリーペーパーを情報発信の一つに、という気持ちもあった」

 -それにしても、タイトルはなぜ「かえる」なのですか。

 「あんまりかしこまったものにしたくなくて。当時は滋賀県草津市に住んでいて、周りがカエルの鳴き声でうるさいのと、『変える』や『換える』などいろんな意味があるのが面白いと思って」

 -お金もかかりそうですが、発行部数はどれくらい?

 「最初は40部ほどを10円コピーで出していた。全部知り合いへの郵送だったから大変でした。今は大体333部。というのは、登録している『ひょうごボランタリープラザ』の印刷機が使えて、用紙持ち込みで千枚まで無料だから。B4に両面印刷して、3枚を二つ折り12ページにするとそうなる」

 「配布先は神戸アートビレッジセンターや元町映画館、中古レコード店やライブハウス。エリアを広げたいと思うけど、頑張りすぎると続けるのがきつくなる」

 -当初から、呼吸のように日常的な行為でありたい、と書いています。

 「作りたいという自分のモチベーションよりも、原稿を書いてくれる人がいるから続けられる。新しい出会いがあって、なんとなく書き手も入れ替わっている感じなので。自分が聴くものも、だんだん知っている範囲を飛び出しにくくなるので、雑誌が好奇心を刺激する要因にもなってると思う」

 -仕事はコンピューター関係です。ウェブ版に切り替えようと思ったりしませんか。

 「パソコン通信の時代から、SNS(会員制交流サイト)的なコミュニケーションは熱心にやってる方だと思います。でも、SNSの場合は積極的にやっている人だけを対象にすることになる。フリーペーパーの場合は、こちらから押しかけるような形になるところが面白い」

 -投稿も手書きが多いのが印象的です。ワープロ原稿にそろえるつもりは?

 「手書きで送られてくる原稿は手書きのまま載せてて、その方が味があっていい。たいてい原稿をもらうのは作業当日で、そのまま版下にしてばたばたと」

 -紙面づくりも即興的で自由。長年音楽シーンを見てきて、今をどう捉えてますか。

 「即興をやってる人は増えてるし、神戸でもグッゲンハイム邸やspace eauuu(スペース・オー)、ビッグアップルやヘラバラウンジなど、表現の場はいろいろある。東京のかつてのアングラシーンも、思い入れがあって紹介する人がいるから、伝説のようになってるんだと思う。神戸の今のシーンも記録すると、きっと面白い。誰かにきっちりリポートしてほしいですね」

【くらもと・たかひろ】1960年、広島県三次市生まれ。82年に大学卒業後、ソフトウエア開発者として関西や広島で働きながら、即興音楽や古楽の演奏、ライブの企画に携わる。神戸市灘区在住。

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