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病を押して執筆活動を続ける高杉良さん=東京都杉並区
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病を押して執筆活動を続ける高杉良さん=東京都杉並区
手書きで書いた原稿をルーペでチェック。「体はつらいですが、やっぱり取材して書くのは面白い」=東京都杉並区
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手書きで書いた原稿をルーペでチェック。「体はつらいですが、やっぱり取材して書くのは面白い」=東京都杉並区

 約80作を世に出した経済小説の第一人者、高杉良さん(79)。相次ぐ病気に見舞われながらも執筆意欲は衰えず、連載をこなし、新作に挑む。「いまだに取材は好き。好奇心も強い。なぜ、どうしてがいつもある。書いているから元気でいられる」。昨秋以降相次いで文庫化した「辞令」など4作が計約34万部刊行するなどブームといってよい状況だ。作家生活40年を超えたベテラン作家に話を聞いた。(加藤正文)

 東京・浜田山の自宅。手書き原稿やゲラをルーペで拡大して読む。「活字が普通に読めないというのは実につらい。どうしてこんな思いまでしてやらなくてはいかんのだろう、と思いますよ」

 2月に肝臓がんをラジオ波治療し、3月に前立腺肥大を手術した。4月には黄斑と眼底出血で入院。今も本調子ではなく、仕事は元気のある午前中にする。朝食前に書き、食後から本格的に取りかかり、午前11時半で終了。「もう長時間は無理。1時間ぐらいやるとかなり目が疲れてくる」という。

 とはいえ、取材意欲は依然旺盛だ。雑誌でITベンチャーに焦点を当てた「雨にも負けず」を連載中。新聞でユニークな経営者の存在を知り、いきなり電話をかけて取材を申し込んだ。

 一方、ゲラを直しているのが「リベンジ」(仮称)。2002年に出した「小説 ザ・外資」の続編に当たる。「アメリカのリーマンショックを作家の目できちんと切り取っておきたいと思ってね」。来年早々の刊行予定だ。

 病気を押して書き続ける姿勢を見て、担当の編集者は「作家の業」と評したという。しかし「アルチザン(職人)」を自称する本人は至って自然体だ。「人の話を聞いて書くのは面白い。僕の場合、取材が7で執筆が3。経済小説の鍵は取材力に基づくリアリティーだ」。80歳を前にして意欲の衰えは見えない。

 業界紙記者だった1975年にデビュー。以来、「金融腐蝕(ふしょく)列島」「広報室沈黙す」など膨大な作品を書いてきた。「全5冊、上下本もある。まあよく書いたと自分でも思う」。単行本の総発行部数は推定500万部、文庫は実に1535万部に上る。

 中でも文庫の「辞令」「出世と左遷(人事権!を改題)」「最強の経営者」「懲戒解雇」で業界関係者が驚く売れ行きを見せた。特に30年前に書いた「辞令」は3次文庫だが、15万3千部を刊行。デビュー時、映画化されて話題になった「金融腐蝕列島」の刊行時に続く、第3のブームといえる状況という。

 「入院中、目のつらさでもう筆を折ろうと思うこともあった。でもファンがついてくれると考えれば頑張れる。簡単に投げ出してはいけない、集中しようと自分に言い聞かせています」

【たかすぎ・りょう】1939年東京生まれ。化学業界専門紙記者、編集長を経て75年「虚構の城」でデビュー。「炎の経営者」「乱気流 小説・巨大経済新聞」など多数。近刊に自伝的小説「めぐみ園の夏」がある。東京都杉並区在住。

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