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ランチ会参加者の話に耳を傾ける廣嚴寺の千葉悠晃住職=神戸市中央区楠町7
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ランチ会参加者の話に耳を傾ける廣嚴寺の千葉悠晃住職=神戸市中央区楠町7
会館を改装して開設した「寺カフェKOBE」の入り口=神戸市灘区灘南通2、西念寺
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会館を改装して開設した「寺カフェKOBE」の入り口=神戸市灘区灘南通2、西念寺

 都会にひっそりとたたずむ寺院の一角に設けられたカフェから、楽しげな談笑の声が漏れる。家族葬の増加などで会堂やホールなどを持て余す寺院が増え、スペースの有効活用を目指す動きが盛んだ。さまざまな人が気軽に集う交流・相談の場という、寺が元来備えていた「原点」を取り戻そうと、奮闘する住職らがいる。(真鍋 愛)

 手製の「和尚メシ」を振る舞う千葉悠晃(ゆうこう)住職(53)。「味はどう? 足りてる?」と声を掛けながら、参加者の皿にそばを盛る。神戸市中央区楠町7の廣嚴(こうごん)寺にある「ラズリカフェ」。毎月17日に恒例のランチ会が開かれ、神戸市内外から男女20人が集まった。写真撮影にも気さくに応じつつ、参加者の近況や愚痴話に耳を傾ける。

 「介護の息抜きに。和尚や他の参加者に悩みなどを打ち明けられて、すっきり。こういう場があるのはありがたい」と同市須磨区の主婦(55)。

 かねてより寺の訪問者減少に悩んでいたという千葉住職が「檀家(だんか)さんも一般の来訪者も自由に休憩ができる場所を作りたい」と、以前は会堂があったスペースにカフェを開設した。カフェ建設構想を聞いた高齢の檀家からは「それ、昔あったで」と言われた。先々代の住職がかつて、会堂で茶を振る舞っていたという。千葉住職は「昔は気軽に人が立ち寄ってくれていたと知って、驚いた」と笑う。

 ランチ会は、職員の上月(こうづき)由美さん(34)による「寺に来たことがない人も気軽に参加できるイベントをつくりたい」との提案で始まった。参加者からも好評といい、同市垂水区の医療コンサルタントの女性(53)は「2年前に東京から移住してきて、知人の輪を広げたいと、参加し始めた。ランチ会で知り合った人と、SNS(会員制交流サイト)でも交流が生まれた」と話す。

 千葉住職は「檀家以外の方が境内に足を踏み入れる敷居を下げたい。目指すのは、誰でも入れる、開かれたお寺。原点回帰です」と意気込む。

 近年は家族葬など小規模な葬儀が増えたうえ、民間の葬儀施設が主流となり、持て余した葬儀スペースをカフェにする例も。

 同市灘区灘南通2の西念寺は3年前、会館1階を改装して「寺カフェKOBE」をオープンした。近隣は住宅街で飲食店が少なく、サラリーマンや地域住民らが日替わりランチなどを求めて来店。一般の利用者が8割を占めるという。

 「オープン当初は、用がないと入ってはいけないと思っていたお客さんも多かった」と振り返るのは、同寺住職の次女で店長の副(そえ)香織さん(29)。にぎわう店内を見ながら「お寺は昔から地域みんなのもの。門徒以外の人も、気軽に立ち寄れる空間にしたい」と意気込んだ。

■民間施設での葬儀増加

 家族葬など小規模葬が増加し、寺院を取り巻く環境は近年、厳しさを増す一方となっている。出生数より死亡数が多い「多死社会」に突入し、葬儀業の必要性は拡大しているが、民間の斎場や葬儀会館での葬儀を希望する人が増加し、寺院での葬儀数は減少。「葬式仏教」とやゆされた寺のあり方を見直す動きが始まっている。

 公正取引委員会が葬儀業を扱う業者に行った2017年の調査によると、葬儀の種類で増加傾向にあるのは、家族葬が51・1%で最多。減少傾向にある葬儀は、故人と生前親好があった人らに参列してもらう一般葬の68・8%。大人数の葬儀が可能な寺院の中には、空間の活用に頭を悩ませる施設もある。

 また、文化庁がまとめた14年度の宗教関連統計によると、葬儀の参列を経験した人が実際に訪れた場所は、斎場・葬儀会館が57・8%と最も高く、寺を含む宗教関連施設は12・3%にとどまった。

 苦境に立つ寺院だが、市民が葬儀以外の局面で、寺院との関わりを求めている一面もある。第一生命経済研究所が09年に全国の40~60代の男女600人に行ったアンケートでは、昨年1年間に寺を訪問した人は76・9%いた。そのうち最多は「墓参り」だったものの、講演会や音楽会などの行事を目的に寺を訪れた人も14・5%いた。交流や相談拠点、さらには人生を語らう場としての「原点」を地域の寺が取り戻す可能性が垣間見える。(真鍋 愛)

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