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映画「教誨師」の一場面。大杉漣さん演じる牧師が、さまざまな死刑確定者と接する((c)「教誨師」members)
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映画「教誨師」の一場面。大杉漣さん演じる牧師が、さまざまな死刑確定者と接する((c)「教誨師」members)
教誨に使われる仏間。手前のパイプ椅子に入所者が座る=明石市大久保町森田、神戸刑務所
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教誨に使われる仏間。手前のパイプ椅子に入所者が座る=明石市大久保町森田、神戸刑務所

 教誨(きょうかい)師。今年2月に急逝した俳優大杉漣さんが、遺作となった映画で主演した役柄だ。罪を犯した受刑者らと面会し、講話を通じて更生を手助けする。一般にはなじみが薄いが、仏教やキリスト教、神道など全国で2千人近くの宗教家が、各地の刑務所や拘置所で活動を続けている。(小川 晶)

 楽しそうに平仮名を練習する老人に、挑発的な言動を繰り返す青年、おしゃべりな中年女性…。10月6日に公開された映画「教誨師」には、さまざまな境遇の6人が登場する。

 共通点は、全員が死刑確定者であるということ。生と死のはざまに置かれた彼らに、大杉さん演じるプロテスタントの牧師が、新米の教誨師として向き合うシーンが淡々と続く。

 兵庫県内唯一の上映施設、元町映画館(神戸市中央区、今月9日まで公開)では、1週目に満席となり、以降も7割近くが埋まる人気ぶり。スタッフの高橋勲さん(47)は「死を直視したテーマに加え、これまで取り上げられることが少なかった教誨師への関心からでしょうか」とみる。

 「一人でも多く更生してほしいと願って続けてますけど、無力さを実感することもありますよ」。兵庫県明石市の光明寺住職、山口芳典さん(76)が声を落とす。

 教誨師だった父の後を継ぎ、同市の神戸刑務所に30年以上赴いている。月に1回、複数人を対象に1時間ほど話す「集合教誨」が中心。延べ千人以上に仏の道を説いてきたが、どれだけ改心の助けになっているのか、手応えは乏しい。

 これまでに一人だけ、出所後に手紙を送ってきた男性がいた。

 集合教誨とは別に、山口さんと1対1の個人教誨を望んできた。教えを請うというよりも、愚痴を聞いてほしいようだった。

 「心を改めて、たこ焼き屋でもしてのんびり過ごしますわ」。そう話していた男性から、2年ほど前に手紙が届いた。暮らしぶりの報告かと思って目を通すと、「事件を起こしてしまいました」と書いてあった。

 男性は再び収監され、今は四国の刑務所にいる。

 指定暴力団の元組員という経歴を持つ牧師の森康彦さん(59)=神戸市灘区=は、同県加古川市の播磨社会復帰促進センターで6年ほど前から教誨師を務める。

 入所者は皆、養育環境などからくる「社会での生きづらさ」を抱えていると感じる。一方で、不遇を乗り越え、まっとうに生活する人も多い。森さんは「頑張って生きようとしているのは同じ。結果が出せる人もいれば、うまくいかない人もいるということだ」と指摘する。

 講話をしていると、入所者の真剣なまなざしに心を打たれるという。「出所したら教会に通いたい」と相談されたこともある。

 森さんが強調する。「世のため、人のためと思って教誨師になったが、自分のためでもあると気付いた。入所者と接していると、宗教家の原点に立ち返ることができるんです」

     

■ボランティアの教誨師、兵庫は110人

 教誨師は、宗教家なら誰でもなれるわけではない。全国教誨師連盟(東京)が、各宗派や教団から推薦を受けて施設ごとに教誨師を委嘱。報酬はなく、ボランティアで入所者に向き合っている。

 近代日本の宗教教誨は1872(明治5)年、真宗大谷派の僧侶によって始まったとされる。各地の宗教家にも広がり、戦後になって教誨の円滑化などを目的に同連盟が発足した。

 今年1月現在、全国111教宗団の1846人が活動。兵庫県内では、神戸刑務所、播磨社会復帰促進センターを含め、神戸拘置所(神戸市北区)や姫路少年刑務所(姫路市)など計7施設に約110人が通う。

 同連盟によると、教誨師の人数はほぼ横ばいで推移。一方で、宗教離れにより、教誨を受ける入所者の数は減少傾向にあるという。

 入所者の国籍や信教は多様化しているが、教誨師は神道系、仏教系、キリスト教系が約9割を占める。礼拝室の整備など各地で対応が進むイスラム教の教誨師はおらず、龍田恒夫事務長は「連盟で検討したことがあったが、ふさわしい宗教家が見当たらなかった」とする。

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