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萬乗醸造社長の久野九平治さん=西脇市黒田庄町(撮影・長嶺麻子)
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萬乗醸造社長の久野九平治さん=西脇市黒田庄町(撮影・長嶺麻子)

 パリの三つ星レストランで人気の日本酒「醸(かも)し人九平次(びとくへいじ)」の蔵元、萬乗(ばんじょう)醸造(名古屋市)は兵庫県西脇市黒田庄町で山田錦を栽培する。さらに田んぼの中に新蔵を建てるという、ワイン醸造を思わせるような計画で多くの日本酒ファンを驚かせた。実際、フランスでワインも造る久野九平治(くのくへいじ)社長は、原料と農地から評価する「ワイン目線」の世界で、山田錦と原産地の北播磨の存在を示す役割を果たしたいと語る。(辻本一好)

 -久野さんは日本酒の価値を高める挑戦を続けてきました。いきさつを教えてもらえますか。

 「28歳で家業に戻った時、経営は機械的生産で下請け中心でした。低コスト、大量、均一という昭和の高度成長期の考え方は全国津々浦々に広がっていて、手作りを大事にすべきうちのような小さな蔵も、家電や自動車のものづくりを目指しちゃった時期があったんです。この利益が出ないスタイルから脱却せねばと思い、酒を変えるため酒造の現場に入りました。吟醸を目指して手作り農家的な仕事に戻し、1997年に『醸し人九平次』を発表しました」

 -山田錦へのこだわりは?

 「熟した果実、気品、優しさなどが私たちのお酒のテーマです。最初は別の米を使っていましたが、山田錦を使えば使うほど、目指す酒を表現できる米だという思いが強くなった。いま使用する米は山田錦9割、雄町1割です」

 「山田錦のポテンシャルは圧倒的です。まず精米。大吟醸では米を半分まで磨きますが、他の品種だと途中で割れてしまったりする。山田錦は磨くことに耐えうるお米で、蒸し上がりも違う。何より酒の味を決める麹(こうじ)が作りやすい。山田錦だと、このお酒にはこういう感じという僕らが狙った通りの麹ができる」

 -そして、山田錦を黒田庄町で栽培するようになった。

 「私はパリのシェフやワイン店に営業活動をしていますが、彼らは必ず『お米はどうしているのか』と聞いてくる。畑とブドウが一体というワイン目線で米を見ている。みんなブドウ栽培に通じているので、うわべの米の知識では彼らのリアルな言葉に勝てないんですね。悔しくて悩んでいた時、ちょうど社員から米を栽培しようと提案され、農協さんなどに相談して始めることにしました」

 -2015年からはフランスでワインの醸造業を始めました。

 「パリにいると、日本酒の見えていない部分を教えてもらいます。醸造はそれをもっと知るためのアクションです。食は異なる人と文化がミックスして変化、進化してきました。ワインにあって日本酒にない付加価値の差を見いだして生かしていきたい」

 -フランスと日本。違いは何だと感じていますか。

 「重要だと思うのは、原産地統制名称(AOC)など食の法律です。農産物の原産地や品質を国が保証するもので、消費者が手を伸ばす指標となっている。彼らは形のないものをルールで守るのがうまい。食のブランドがそうだし、輸出で外貨を稼ぐ手段にもなっている。諸外国はみな農業と食文化をそうして守っている」

 「日本にはそれがない。損をしているし、守らないと危うい。神戸ビーフなんか、彼らならもっと国を挙げてブロックしますよ。種を外国に持ち出され乗っ取られたとしても、『守らなかったからだ』と言われるのが世界標準です。山田錦はまぎれもなく兵庫で生まれたお米なんだから、兵庫県がもっとルールづくりをやっていい。本質、体系、歴史を示す。日本酒を深く知りたい海外の人が求めているのも、そこなのだから」

 -「田と蔵の直結」をテーマに、19年末稼働を目指す黒田庄町の新蔵の狙いもそこにあると?

 「ワインがブドウについて訴え掛けるように、私たちもお米のことをしっかりと示したい。ワインと日本酒の価値の差を埋めるためには、田んぼの物語が必要です。まず日本酒屋が行動を起こし、日本酒の価値を高める。それによって日本の農村とお米に目を向けさせる。目指すのは田んぼを世界目線の土俵に上げることです」

【くの・くへいじ】1965年、名古屋市生まれ。97年、醸し人九平次を発表。2009年、全商品を純米吟醸と純米大吟醸に。15年、農業法人アグリ九平治を設立。仏ブルゴーニュのワイン醸造所取得。

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