「丹波篠山市」への市名変更の賛否を問う兵庫県篠山市の住民投票が18日に迫る。この丹波篠山という名称、実は平成の大合併で篠山市が誕生する際にも候補として挙がっていた。一方、篠山市で市名論争が続く一因になったとされる隣の丹波市も、合併で誕生した際は市名問題で紛糾し、旧町役場に市名再考を求める脅迫状が届いたこともある。さて今回の住民投票で、地域に影を落としてきた積年の課題に決着がつくのか-。(金 慶順)
1999年4月、篠山、西紀、丹南、今田からなる旧多紀郡の4町合併で誕生した篠山市。4町長らでつくる合併協議会は97年、「篠山」を入れることを条件に、新しい自治体名を住民から公募した。
当初は人口が法定に満たず、合併後も「町」の予定だった。385件・63通りのアイデアが寄せられ、約半数が「篠山町」、約4分の1が「丹波篠山町」。そのほか「新篠山町」「大ささやま町」「篠山パラダイス町」などもあった。
だが町名を決める協議は難航し、4町の町長と議長でつくる小委員会に委ねられた。最終的に「篠山」が選ばれた理由を、合併協は「多紀郡の総称といえるほど定着している」「住民からの募集でも約半数を占めた」などと説明した。
市民からは「知名度のある『丹波』にこだわった名前の方がよい」「3町が篠山町に吸収合併されたようだ」などの反対意見もあったという。その後、市制移行の人口要件が緩和され、「篠山市」が誕生した。
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続いて、現在の丹波市である旧氷上郡でも柏原、氷上、青垣、春日、山南、市島の6町で合併協議会が発足したが、やはり市名は一筋縄ではいかなかった。
2002~03年に新市名のアイデアを全国公募。4375件・1290通りの応募があり、最多が「氷上市」657件、次点が「丹波市」458件だった。
合併協は最終候補を「丹波」「ひかみ」「丹波ひかみ」など五つに絞り、委員35人で投票を実施。結果は丹波が22票、ひかみが7票で、新市名は丹波市に決まった。
だが「公募で最多の『氷上市』が最終候補から外れたのはなぜか」「丹波は広域を表すので市名にふさわしくない」と反論が噴出。市民団体は市名再考を促す要望書や署名を提出した。また、旧町役場には「市名を白紙に戻さなければテロ的行為を辞さない」とする脅迫状が届いた。
当時を知る関係者は「新市名に『氷上』を選べば氷上町優位の合併に見えるという声があった。それを避けようとしたという見方もできる」と振り返る。
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両市で住民を二分するような議論を巻き起こした市名問題。今回、篠山市では市名変更を推進する市長が「信を問う」として出直し市長選に踏み切り、住民投票と同じ18日に投開票される。なお、住民投票は投票率50%未満なら不成立となり、開票もされない。
