総合 総合 sougou

  • 印刷
映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」の一場面
拡大
映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」の一場面

 認知症の母とその介護を担う高齢の父の日常を娘が記録したドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」が元町映画館(神戸市中央区)で上映されている。私的な立場ながら終始、温かな視点で撮られ、認知症患者を抱える家族に共通する普遍的な問題もあぶり出す。(片岡達美)

 広島県呉市生まれの「私」(信友直子監督)は大学進学で上京。以来、東京で暮らし、テレビのディレクターとしてドキュメンタリー制作に携わってきた。そんな娘を両親は誇りに思い、温かく見守っている。

 もの忘れが増えた母がアルツハイマー型認知症と診断されたのが2014年。母は80代後半、父は90歳を過ぎ、耳が遠くなっていた。「私」は故郷で介護をすることも考えたが、父から「わしがやる。あんたはあんたの仕事をせい」と言われ、両親の記録を残すことが自分の使命と考えた。

 料理上手で社交的な母が、洗濯物をため込み、買い物に出掛けて道に迷ってしまう。腰の曲がった父は初めて家事を担い、母の面倒を見ながら穏やかな日々を送っていた。

 しかし、徐々に病状が進み、「みんなに迷惑かけるね。ごめんね」と繰り返す母。不安や戸惑いを理性で抑えられなくなり「邪魔にされるなら死んだ方がええ」と泣きじゃくることも。

 「私」はカメラ越しに、涙声で「何でもしてあげるけん」と訴える。普段は穏やかな父が「死にたいなら死んでしまえ」と声を荒らげる場面も隠さずに映し出す。

 他人の手を借りることを拒んできた両親が、ヘルパーやデイサービスを利用するまでの過程は、老老介護や遠距離介護の現実を見せつけ、身につまされる。両親は現在、97歳と89歳。必ず訪れる老いを、周囲はどうとらえてどんな選択をするのか。家族間の関係性や、地域とのつながりも考えさせられる作品。

 1時間42分。上映は7日まで。元町映画館TEL078・366・2636

総合の最新
もっと見る