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入社約3年。工事現場の作業で手が分厚くなった=神戸市長田区
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入社約3年。工事現場の作業で手が分厚くなった=神戸市長田区

 「お疲れっす」

 作業着の野村太一(30)=仮名=が戻ってきた。

 「ご苦労さん。今日の進み具合どうや」。空調設備関連会社「コウキ」(神戸市長田区)の社長、田中敏文(53)が迎えた。

 太一は元受刑者。田中は出所者を引き受ける協力雇用主だ。ここで約3年働く太一を取材した。

 「僕、ハリセンに3年いたんすよ。でも、就職が決まらなくて。社長は恩人っす」と明るい口調で語ると、田中が「思ってないことは言わんでええ」と照れ笑いした。

 ハリセンとは、兵庫県加古川市にある官民協働刑務所「播磨社会復帰促進センター」のこと。定職がなかった太一は、キャバクラのボーイとして働いていた時、店の仲間と空き巣を繰り返した。「金には困ってなかったけど、誘われて」。仲間の1人が捕まり、太一もあっけなく逮捕された。

 炊事場に配置され、朝から晩まで受刑者約500人の食事を作った。「自由がなく、ほんとにみじめだった。ばかやったなと思います」。仮出所後、保護司の紹介で田中の下で働き始めた。慣れない仕事に疲れ、現場の親方から怒鳴られると心が折れた。「1日働くと、2日は休んだ」。部屋にこもりがちになると、田中がドアをノックしてくれた。「野村君、ゆっくりでええからな」。優しい言葉に驚いた。「普通なら首。見捨てないでくれて、うれしかった」

 昨秋から11カ月、東京の建設現場で働いた。仕事を早く上がらせてもらい、大ファンのアイドルのライブに通った。

 「刑務所では夜9時にテレビが消える。持ち込める雑誌は月に1冊だけ。穴があくくらい眺めた。仕事頑張って良かったなって思いました」。無邪気な答えに噴き出す田中。「でも、工事したビルが仕上がっていくのを見たら、『俺がやったんだぞ』って気分良かったっす」と言葉を継ぐ太一に、田中が目を細めた。

 田中が席を立つと太一が打ち明けてくれた。「社長には言ってないんすけど、いつか東京に出たいなって思ってます」。アイドルの近くに住めるからではない。「仕事で成果出すと、自分に自信ができた。社長への恩返しが済んだら、新しい挑戦がしてみたいっす」(敬称略)

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