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大輝と向き合う野口善國弁護士。カラオケで大輝は大好きな「出会いのかけら」を歌った=大阪府内
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大輝と向き合う野口善國弁護士。カラオケで大輝は大好きな「出会いのかけら」を歌った=大阪府内

 非行少年たちは衝動的で、時に繊細だ。そばで見守る人がいる。

 「雨降ってて、道も分からない。阪急桂駅(京都市)まで迎えにきてもらえませんか。帰る金がありません」。午後8時半、大輝(20)=仮名=から弁護士の野口善國(よしくに)(72)にメールが届いた。

 前日、面会の約束をしていたが、直前になってキャンセル。「放っておくと、何をしでかすか分からん」。大輝のもとに急いだ。

 大輝は親に育児放棄され、児童養護施設で育った。里親と暮らしていたが、カッとなるとすぐに暴力を振るった。傷害事件を何度も起こし、少年院へ。3年ほど収監され、19歳の夏に退院した。親が引き取りを拒否したため、兵庫県弁護士会の「寄り添い弁護士制度」で野口ら3人が支えることになった。

 更生に向け全面的に支援する制度だ。社会復帰に向け住居の確保や、生活保護の申請を手伝い、保護観察所への出頭に付き添う。

 野口は大輝が大阪府内のアパートに入れるよう手配。生活保護の手続きに付き添い、職探しも手伝った。今も月2回、料理を教えたり、カラオケに行ったりして見守りを続ける。

 午後9時半、桂駅で合流。不安げな瞳を見ながら野口が言う。「大阪まで一緒に行こう」。大輝がほっとした笑顔を見せた。

 「ダチの車で来たから、帰り方分からんかった」

 「いいんだ。カラオケでさぁ、君が歌う曲なんだっけ」

 「ケツメイシのラップ」

 「いい歌詞だよな」

 大輝は解体現場の仕事に行く途中、ケツメイシの「出会いのかけら」をよく聞き、カラオケでも歌う。

 出会いも別れも乗り越えた 君はもう一人じゃないよ ずっと…

 野口は大輝の話をよく聞き、説教をすることはない。何度も褒め、いたわった。「仕事頑張ってるな。ちゃんと食べろよ」。大阪で大輝は手を振って別れた。

 立ち止まったり、後戻りしたりしながら少しずつ成長してると野口は思う。「頂上が見えない登山みたいなもんだなあ。でもな、愛を持って接すれば、いつかは応えてくれるんだ。今はその時を待つのみ」

 何人もの非行少年を見てきた弁護士がつぶやいた。

(敬称略)

=おわり=

(この連載は津田和納が担当しました)

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