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コンゴで難民保護に携わる米川正子さん=宝塚市(撮影・後藤亮平)
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コンゴで難民保護に携わる米川正子さん=宝塚市(撮影・後藤亮平)

 ノーベル賞の授賞式がスウェーデンとノルウェーで10日(現地時間)に開かれる。今年の平和賞は、紛争の続くアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で性暴力と闘い、被害女性の治療に尽力してきた産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏(63)ら2人に贈られる。現地で難民保護に携わり、同氏の命がけの活動を知る米川正子さん(51)は「私たちの生活と無縁の問題ではない」と語る。どういうことなのだろう。(新開真理)

 -コンゴ。どんな国ですか。

 「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として、1998年から2008年までに通算4年、勤務しました。国土は日本の6倍と広く、食材も豊か。国民性は明るくてフレンドリーで、関西人って感じですよ。ただ90年代後半に大規模な内戦が起き、東部では今も戦闘が続いています。レアメタル(希少金属)などの鉱物資源が豊富ですが、それが紛争の資金源でもあり、略奪を目的としたレイプなどが後を絶ちません」

 -ムクウェゲ氏は99年、コンゴ東部に病院を設立。2年前、米川さんらの招きで初来日しました。

 「ハートもスケールも大きく、小さなことにこだわらない方です。国益という言葉がありますが、人間益(の追求)という言葉がぴったり。今回の受賞は紛争下の性暴力を世界に向けて告発してきた活動が評価されましたが、長く難民を支援し、女性の人権尊重も訴えてきた。弱者への強い思いを持った男性です」

 -これまでに治療した女性は5万人以上になるとか。

 「医師を中心に国際的なチームを組み、治療に加え、心理的なケアや生活支援、加害者を罰するための活動も続けています。一方でコンゴ政府から敵視され、6年前には暗殺未遂もあり、一時的に欧州に避難しました。それでも患者たちが果物などを売ってお金をつくり、帰国用の航空券を買いたいと申し出て、戻ってこられた。現在は国連平和維持活動(PKO)の部隊が警備に当たっていますが、病院職員らへの脅迫は絶えないと聞いています」

 -そうした中、何がムクウェゲ氏を動かしているのでしょう。

 「なぜ紛争がいつまでも終わらないのか、なぜこれほど貪欲に奪い合うのか。そういったことへの怒りではないか。コンゴ東部は長く『女性と少女にとって世界最悪の場所』だと言われてきて、国連なども調査はしてきたが、被害を訴えづらいこともあって大多数の加害者は裁かれないまま。憤りを感じておられると思います」

 -平和賞については。

 「ムクウェゲ氏は欧米諸国では以前から高く評価されており、もっと早く受賞されてもよかった。でも今回、(過激派組織『イスラム国』による性暴力を受け、その根絶を訴える)イラクのナディア・ムラドさん(25)と同時受賞となったことは意義深い。違う地域の、そして支援する側と被害者が一緒に選ばれたことで、世界共通の問題として受け止めてもらえたのでは」

 -私たちにできることは何でしょうか。

 「アフリカや中東の問題で、自分たちと関係ないと思う人は多いかもしれない。でもコンゴで、時に住民らの犠牲も伴って採掘された鉱物は携帯電話やパソコンなどに使われており、見えにくいけれど、私たちの日常生活と無縁ではない。資源の負の側面も知ってほしいのです。受賞を機に、ムクウェゲ氏のドキュメンタリー映画『女を修理する男』が各地で再上映されています」

 「ムクウェゲ氏は紛争下の性暴力を『性的テロリズム』と呼んでいる。人々に恐怖を与え、地域社会を支配できる『武器』だからです。根絶するためには紛争自体を止める必要がありますが、国際社会の関心は低い。これまで600万人以上の死者が出ているとされ、第2次大戦後、一地域の犠牲者数としては世界最大級なのに。私たちの『コンゴの性暴力と紛争を考える会』では現地の支援も検討しています。いつか情勢が落ち着けば、必ず病院を訪ねたいと思っています」

【よねかわ・まさこ】1967年神戸市生まれ。神戸女学院大卒、南アフリカ・ケープタウン大大学院で修士号。国連ボランティアを経て96~2008年、UNHCR職員。16年から立教大特定課題研究員。

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