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午前6時、開門と同時に駆け出す福男選びの参加者ら=西宮神社
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午前6時、開門と同時に駆け出す福男選びの参加者ら=西宮神社
ゴールの拝殿前に立つ「逆さ門松」。地域の風習を伝えようと、2008年から設けられている
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ゴールの拝殿前に立つ「逆さ門松」。地域の風習を伝えようと、2008年から設けられている
江戸時代の「西宮大神本紀」に残る忌籠の風景。門松を逆さにしている様子が分かる(西宮神社提供)
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江戸時代の「西宮大神本紀」に残る忌籠の風景。門松を逆さにしている様子が分かる(西宮神社提供)
忌籠で静まり返る境内で、午前4時から執り行われる十日えびす大祭(西宮神社提供)
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忌籠で静まり返る境内で、午前4時から執り行われる十日えびす大祭(西宮神社提供)

 男たちは、なぜ走り出したのか。門が開いたからだ。ではなぜ、門は開いたのか。閉じていたからだ-。新年恒例の「福男選び」で知られる西宮神社(西宮市)の開門神事は、そんな禅問答のようなやり取りに神髄があるという。

(小川 晶)

 商売の神様えべっさんの総本社として、例年100万人以上の人出でにぎわう西宮神社の十日えびす(9~11日)。拝殿への一番乗りを目指し、表大門の開門と同時に参加者が境内を全速力で駆ける10日早朝の神事は、年始の風物詩として全国的な知名度を誇る。

 だが、元々は神事ではなく、平成期に入って後付けで定着したそう。同神社の吉井良英・権宮司は「いち早く参拝すれば福を授かれるという心理が競走に発展し、恒例化したことで、神事として認められるようになった」とみる。

 一番乗り争いは昭和期に激しくなったようだが、その発祥をたどると、開門前に執り行われる「忌籠(いごもり)」に行き着く。こちらは、室町期から受け継がれる正真正銘の神事だ。

     ◆

 福男選び開始の6時間前、午前0時になると、同神社の全ての門が閉じられる。静寂に包まれた境内で、神職は身を清め、起きたまま時を過ごす。

 これが忌籠で、江戸期ごろまでは周辺の家々にも浸透していた。9日夜から10日未明にかけて、馬に乗ったえべっさんが地域を巡るという伝承に基づいている。

 1926(大正15)年刊行の「西宮町誌」によると、住民は、えべっさんに枝葉が刺さらないよう玄関前の門松の松などを逆さにして戸締まり。豆腐の田楽などを食べて静かに過ごし、夜明けを待ってお参りする習わしで、これが競走につながっていったという。

 閉門時の忌籠に取って代わり、定着した開門後の福男選び。今では、午前6時の開門前から好スタートを狙う走者で周辺はごった返す。地元以外からの参加が増えているとはいえ、風習の原点に立てば、不自然な光景と言えそうだ。

     ◆

 開門神事が抱える“矛盾点”は他にもあり、同神社にはさまざまな指摘が寄せられるという。

 えべっさんを足の悪い神様とする説があるが、その総本社で健脚を競うのはいかがなものか-との意見。「神聖な境内を走る行為がそもそもおかしい」という考え方もある。

 吉井権宮司は「えべっさんは庶民の神様であり、庶民の思いに合わせて神事が形作られるのは自然なこと」とおおらかに構えるが、順位争いにこだわる風潮の高まりを気に掛ける。

 「一番乗りを競うのもいいが、もともとの忌籠が『逆さ門松』のように思いやりにあふれた行事だったことを忘れないでほしい」

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