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京都産業大学教授伊藤公雄さん=京都市左京区
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京都産業大学教授伊藤公雄さん=京都市左京区

 昨年、セクハラや医学部入試の差別的な扱いが次々と明るみに出て、女性への偏見が依然として根強いことが分かった。ガラスの天井で行く手を阻まれ、足元のはしごも外される女性たち。一方、「男らしさ」を求められる男性たちも息苦しい。ともに生きやすい社会にするにはどうすればいいのだろうか。男性学を研究し、兵庫県姫路市の男女共同参画審議会長を務める社会学者、伊藤公雄・京都産業大学教授に聞いた。(片岡達美)

 -医学部入試問題で順天堂大学は、女性を不利に扱ったのは「コミュニケーション力が高いから。補正が必要」と説明しました。

 「医師にとって患者や医療従事者との対話能力は極めて重要。だったら女性医師を増やそう、となるはずだが、全く逆行している」

 -昨年末には人権派とされるフォトジャーナリストが性暴力で告発されました。

 「政治的にはリベラルでも、男女関係では女性を支配・所有し、称賛されることで自分の力を確認したがる男性もいる」

 -被害を告発する「#MeToo」(「私も」の意)運動ですが、日本ではいまひとつな印象も。

 「確かにアジアで見ても韓国、台湾では大きなムーブメントになったが、日本は鈍かった。各組織の上層部の感度が鈍い。セクハラの福田元財務事務次官は、日本以外なら即刻クビにしただろう。メディアも男性主導だから、面白おかしく取り上げる傾向が強く、人権問題にまで踏み込んだ例は少なかった。この件では私も取材をたくさん受けたが、男性記者は全国紙の一人だけだった」

 -男性学の始まりはいつごろなのですか?

 「男性学の誕生は1970年代のこと。ウーマンリブ運動が盛んだった米国で、男性の視点からも性別役割を考えようとした。私は学生時代、リブ活動に触れ、イタリアのファシズムという『男性性』が過剰な思想の研究から始めた。日本では80年代後半から女性政策が広がる中で、男性の立場から男女平等を考察した。初めて『男性学』と付くゼミを京都大学で開講したのが91年だ」

 -そこで何が浮かび上がったのですか?

 「70年代まで欧米では女性の多くが専業主婦だったが、日本はずばぬけて女性が働く社会だった。その後、70~80年代になって欧米では女性の労働参画が進む。これに対し日本は男性の長時間労働、女性の低賃金のパート労働と家事・育児が経済成長を支えた。これが『成功体験』となり、バブル崩壊とリーマンショック以降もしがみついている」

 「近い将来、経済が停滞し、少子高齢化が進むことは90年代初頭には分かっていたことだ。内閣府などの委員会でも声を大にして言い続けてきた。女性の社会参画がなければ日本はもたない、と」

 -世界経済フォーラム(WEF)の2018年報告書で、日本の男女格差は149カ国中110位でした。主要7カ国で最下位の状態が続いています。

 「世界では豊かな国ほど男女平等が浸透している。なのに、日本では『女性の活躍』=『安い労働力として人手不足を埋める』という考え方のままだ」

 -とはいえ時代は移り、男性の意識も変わってきました。

 「『男らしさ』に縛られていると過労死や自殺に至るケースがある。共働きでないと困ると考える若い男性は増えている。厚生労働省によれば、育休を取得した男性は18年度で5・14%。まだまだ低いが、調査を始めた1996年以来、最高となった」

 -流れをさらに進めるには?

 「政府や企業のトップ層が過去の失敗に気づき、男性中心の単一的な見方を変えて、女性という違う視点を取り入れることだ。意思決定の場に女性を一定割合入れるクオータ制度には意味がある。長時間労働を規制し、共働き家庭を支援する施策の充実も必須だ」

 「男性主導の職場を避け、専業主婦をしたいという若い女性も増えているが、他者に依存するのではなく、男女とも経済的、精神的に自立してもらいたい」

【いとう・きみお】1951年埼玉県生まれ。京都大大学院博士課程満期退学。神戸市外大助教授、京都大教授などを経て現職。日本ジェンダー学会会長など歴任。著書に「男性学入門」など。

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