総合 総合 sougou

  • 印刷
スタッフが採寸するワールドの「アンビルト タケオキクチ」=東京都渋谷区
拡大
スタッフが採寸するワールドの「アンビルト タケオキクチ」=東京都渋谷区

 オーダースーツが人気だ。かつては1着数十万円はかかる高級品のイメージが強かったが、紳士服大手やアパレルが手頃な値段で作れる「パターンオーダー」などを強化。さらにITの活用で手軽に注文できるサービスが広がり、身近な存在になった。既製のスーツに物足りなさを感じている若手社員にも広がっている。(藤森恵一郎)

 アパレル大手のワールド(神戸市中央区)は昨年12月、オーダースーツの新ブランド「アンビルト タケオキクチ」を発表、路面店を東京・渋谷にオープンした。スタッフが採寸し、決まった型紙を基に袖丈や着丈などを補正するパターンオーダーで、価格帯は3万9千円~7万9千円。注文から最短10日で届く。

 スーツなどのコーディネートが並んだ店内の棚には、QRコードが付いている。客はスマートフォンをかざして公式サイトに接続すると、画面上で生地やボタンの種類などを好みに応じて変え、仕上がりをイメージできる。2着目からは店に来なくても、登録された採寸データを基にスマホから注文することが可能だ。

 同社の「タケオキクチ」では20年以上前からオーダースーツを手掛ける。「ここ5年ほどは毎年2桁成長」といい、「アンビルト タケオキクチ」担当の尾関修司さんは「働き方改革の一環で職場での服装が多様化し、こだわって着たい人が増えている」と話す。

 別の事情もある。衣料品の供給過剰による値崩れが業界共通の悩みとなる中、余分な在庫を抱えなくて済むからだ。尾関さんは「一人一人に合ったスタイリングを既製服で提案しようとすれば、店舗は在庫で埋まってしまう」と話す。

 一方、団塊の世代の退職やクールビズの定着などを背景に、既製スーツは年々売れなくなっている。総務省の家計調査によると、1世帯(2人以上世帯)の背広服への年間支出額は2000年1万118円だったのが17年には5217円とほぼ半減した。

 青山商事(広島県)やAOKI(横浜市)など紳士服量販店もオーダースーツを拡充している。

 AOKIは一部大型店での取り扱いだったパターンオーダーを、昨年10月から全店で展開している。「無駄な物は持たず、本当に自分に合った物だけを持つ志向が高まっている」と執行役員の加藤光さん。

 同社や矢野経済研究所(東京)によると、オーダースーツ市場は17年度、452億円に達した。既製スーツ市場は1980億円と約4倍だが、その差は年々縮まっている。

 アパレル大手オンワードホールディングス(東京)の子会社や伊藤忠商事(同)も17年から市場に参入。18年にはインターネット衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ、千葉市)も参戦するなど、オーダースーツ市場は活況を呈している。

■テーラーが高齢化、神戸の老舗は苦戦

 「日本近代洋服発祥の地」とされる神戸には、高い技術でスーツを仕立てるテーラーの文化が根付いてきた。だが、大手によるオーダースーツ市場が盛況な一方、後継者がおらず当代限りで廃業を予定する老舗も少なくない。

 テーラーなどでつくる兵庫県洋服商工業協同組合によると、組合員は神戸市27人、西宮市と小野市に各1人で、70、80代が多い。連絡先を公表している神戸市内の組合員に取材したところ、12人中9人が「後継者がいない」と答えた。

 テーラーは高い技術とセンス、流行に敏感な探究心などが求められる。「60歳でようやく一人前」(井場幸男理事長)とも言われ、後継者育成が難しい。

 こうした状況を何とかしようと、同組合など業界団体と神戸市は2000年、「神戸ものづくり職人大学」を始めた。昨年3月に活動を終了したが、井場理事長は同4月に若手職人の受け皿となる新会社を設立。「約150年続いてきた『神戸洋服』の文化を次の世代につなぎたい」と話す。

総合の最新
もっと見る