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日本骨髄バンクのサイトのスクリーンショット
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日本骨髄バンクのサイトのスクリーンショット

 競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したことを受け、日本骨髄バンク(東京)のドナー(提供者)登録への関心が高まっています。日本骨髄バンクのHPによると、ドナー登録者は2018年3月末で48万3879人。その1人で、神戸新聞社北播総局の笠原次郎記者は、06年に骨髄液を提供しました。ドナーになって感じたさまざまな思いを、翌年2月、連載「ドナーになって 骨髄移植の現場から」でつづりました。池江選手のニュースに触れ、あらためて笠原記者の思いを紹介します。

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 骨髄液の提供者と患者さんを結ぶのは「数奇な縁」だと感じています。提供された骨髄液が相手の体内で順調に血をつくるには、白血球の型が合う必要があり、その確率は血縁がない場合、数百から数万分の1。私と適合した人は米国に住む40代の女性でした。そう聞いたとき、アジア系なのかな? 先祖がどこかでつながっているかも-と想像を巡らし、少し親しみがわきました。

 提供に至るには家族の同意が必要です。未婚なら両親、既婚なら配偶者にサインをしてもらわねばなりません。私の妻も反対する母との板挟みになり、少し悩みましたが、最後は納得してくれました。あのとき8カ月だった長男は中学1年となり、身長もほぼ私と変わらないまでに成長しました。元気に大きくなっていることは本当にありがたいです。

 骨髄液を提供したほかの男性に取材したとき、印象に残った言葉があります。提供に反対する妻に「じゃあもし、ぼくたちの子が白血病になったらどうすんや」と言ったそうです。さらに、骨髄移植を受けて完治した少年の母は、家族で夕食を囲んで談笑するといった「すぐそばにある幸福」の存在を、長い闘病生活を経たが故に「かみしめている」と教えてくれました。

 提供には手術時のリスクに納得することや家族の説得など多少の手間もあります。ただ「誰かのことをもし救えたのなら」と今でも提供したことは良かったと思っています。白血球の型は簡単には合いませんから、移植を受けられる人を増やすには、登録者を増やすしかありません。池江選手のように困難に直面している人を励ますためにも、事前に家族と話し合った上で登録することをおすすめしたいと思っています。

【2007年2月12日付け記事から】

「ドナーになって 骨髄移植の現場から 人命救う『13の穴』」

 8年前、財団法人骨髄移植推進財団(東京)が運営する骨髄バンクに登録した。ただ白状すると、特に信念や強い関心があったわけではない。だから「提供者(ドナー)候補の一人に選ばれた」という知らせには「まさか」と驚いた。自分が当事者になるなんて、想像もしなかった。「家族にどう説明しよう」「手術は安全なのか」…。さまざまな思いが頭をよぎった。

 一方で、未知の世界に純粋に興味がわいた。「誰かの命を救えるなら」という思いも生まれた。不安は、これらの気持ちで和らいだ。

 それから3カ月半、検査などで5回ほど病院に通った。「検査結果はOK」「手術日のことですが」…。移植コーディネーターの話が徐々に具体的になり、「候補」から「本命」になっていくのを感じた。

 個人的にも勉強を重ねた。骨髄移植では、白血球の型(HLA)さえ適合していれば赤血球のABO型は問わず、移植を受けた患者の血液型が、ドナーのものに変わることがあると聞いて驚いた。手術には3泊4日の入院が必要と言われ、仕事を休めるかと気をもんだが、会社のボランティア休暇制度が利用できることを知り、安心した。

 最後の1カ月余りは体調に気をつけて過ごした。ドナーの自覚がいつの間にか養われていたと、われながら思う。手術当日は落ち着いて迎えることができた。ただ手術室に運び込まれるときだけは、やはり緊張した。

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 手術を終えて病室に戻ると、腰のガーゼに気が付いた。体表の傷口は左右各1カ所。そこから針を通し、角度を変えながら骨盤に計13カ所の穴を開けて、骨髄液を抜き取ったという。通常は少なくとも20カ所から採取するが、私の場合、1カ所から多めに取れたそうだ。

 痛みはなかった。傷口周辺にかすかな違和感が残った程度だ。唯一感じた苦痛は、手術の際、体調を確認するために尿道に管を挿入し、手術後に抜いた部分。排尿痛が続いたが、退院時にはきれいになくなっていた。

 軽かったのは自分だけかと思ったが「ほとんどの人がそうですよ」と執刀医。経過は良好で、腰を意識することもない。今は趣味のテニスでコートを走り回っている。

 コーディネーターは、患者の情報をある程度教えてくれる。私の骨髄液は、米国の40代の女性に届けられたという。

 しばらくして、財団から「移植は無事完了」との封書が届いた。詳しいことは分からないが、彼女の血液が本来のA型から私のB型に完全に変わるころには、病状は安定しているだろう。そうしたら財団を通じて手紙を送りたい。富士山を背にツルが飛ぶメッセージカードも購入済みだ。何と書こうか、悩むのが楽しい。

【骨髄移植】白血病などが原因で血液が正常につくられなくなった状態の根治療法。赤血球や血小板などのもとになる造血幹細胞を含む骨髄液を、ドナーの腰骨から抜き取り、患者の腕の静脈から注入する。骨髄液が患者の体内で順調に血をつくるには、白血球の型が合う必要がある。適合する確率は、きょうだいで4分の1、他人なら数百から数万分の1。

(編注)4分の1の適合確率はきょうだいでした。記事を訂正しています。

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