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妹の由起さんの写真を手に、JR西日本との交渉を振り返る荒川直起さん=大阪市東淀川区
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妹の由起さんの写真を手に、JR西日本との交渉を振り返る荒川直起さん=大阪市東淀川区

 尼崎JR脱線事故の現場(兵庫県尼崎市久々知)に昨年9月、整備された追悼施設の名碑に、事故で交際相手の男性を失い、翌年に自ら命を絶った荒川由起さん=当時(32)=の名前は刻まれていない。記名対象を事故で亡くなった乗客106人に限るJR西日本の方針のためだ。「記名が無理ならば、せめて妹をしのばせるような花壇を置いてほしい」と訴え続けた兄の直起さん(52)=大阪市東淀川区。願いがかなわないまま迎える発生14年を前に、心境が変わった。(小川 晶)

 「花壇は、もう置かなくていいです」

 今月5日、直起さんは、JR新大阪駅で面会したJR西の担当社員に意を決して伝えた。10歳ほど年長の担当社員は、何とも言えない複雑な表情を浮かべ、静かに頭を下げた。

 13年間の交際を経て結婚を約束した男性=当時(33)=を事故で失い、翌年10月、自宅マンションから飛び降りた由起さん。事故がきっかけで亡くなった妹の証しを現場にとどめようと、整備計画の方向性が固まった約5年前からJR西と向き合い、「検討中」との回答が続く中で、自ら区切りを付けた。

 「進展もなくずるずるいって、JRを恨み倒すのは精神的にきつい。精いっぱいやっての結論だし、妹も理解してくれると思って」

 きっかけは、昨秋ごろに負傷者の男性と交わした会話だった。名碑への記名対象とならず、代替案の花壇の設置すらかなわない現状を嘆いたところ「JRも、よくやってくれてると思うよ」と諭されたという。

 直起さんは、由起さんの死からの経緯を改めて振り返った。事故との因果関係を訴え続け、3年ほど経って認めたJR西。これまでは「当然のこと」と受け止めていたが、「歩み寄ってくれた」とも思えてきた。高ぶる感情を何度もぶつけ、互いに涙し、会社との板挟みになりながらも寄り添ってくれた担当社員の姿が浮かんだ。

 事故14年となる25日があさってに迫る。花壇の設置をあきらめたことへの後悔はないが、妹を失った悲しみや憤りは消えない。「『まだひょっとしたら何とかしてくれるかも』とJRに期待してしまっている自分がいる」とも明かす。

 ただ、欠かさず続けてきた追悼慰霊式への出席を今年は見送るつもりだ。会場が現場に変わったことで、他の遺族との「違い」を突き付けられ、心が揺れるのが怖いという。巡り来る日をどこでどう過ごすのか、直起さんはまだ迷っている。

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