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「美智子さまのスイセンで、花束への意識が変わった」と話す森本照子さん=神戸市兵庫区東山町2
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「美智子さまのスイセンで、花束への意識が変わった」と話す森本照子さん=神戸市兵庫区東山町2
焼失した菅原市場の跡地にスイセンの花束を手向けられる天皇、皇后両陛下=1995年1月31日、神戸市長田区
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焼失した菅原市場の跡地にスイセンの花束を手向けられる天皇、皇后両陛下=1995年1月31日、神戸市長田区

 阪神・淡路大震災で焼失した神戸市長田区の旧菅原市場。震災直後、天皇陛下と共に被災地を見舞った皇后美智子さまが、焼け跡の一角にスイセンの花束を手向けられた。そこは森本照子さん(69)の生花店が焼けた跡地のすぐ近くだった。その花束に背中を押され、森本さんは店の再建を決意、同市兵庫区に場所を移して再開させた。天皇陛下の退位まであと1週間。「美智子さまのおかげで今がある」。森本さんは感謝を胸に商売を続けている。(貝原加奈)

 森本さんが夫の政一さん(62)と同市場に生花店「花恋(かれん)」を構えたのは1989年。ずっと、需要の多い仏花などを扱っていたが、いつかはおしゃれな洋花の花束を売りたいと思っていた。夢を実現しようと、店をリニューアルし、50種類以上の洋花を仕入れた。待ちに待った開店の日の朝、震災が起きた。

 自宅兼店舗の2階に夫婦で寝ていると、ドンと突き上げるような揺れの後、長い横揺れが続き、1階の店舗部分が崩れ落ちた。必死に外に逃げ出したが、その後は何もできず、猛火にのみ込まれる店舗をぼうぜんと眺めるしかなかった。

 「まだ1本も売らないまま。残ったのは借金だけ。もう頑張れない」

 避難所で途方に暮れていた1月31日、天皇、皇后両陛下が同市場に見舞いに来られた。見に行くと、美智子さまががれきの上に、皇居で摘んだ17本のスイセンをそっと供えられた。森本さんの店の焼け跡のすぐそばだった。

 両陛下が去った後、森本さんはスイセンに顔を近づけて香りを嗅いだ。決して派手ではない花束だが、その清らかな力に心を打たれた。「こんな心のこもった花束を作りたい」。気持ちが奮い立った。

 森本さんは、再び花の仕入れを始めた。残ったワゴン車に花を載せて、近くの墓地にお参りに来る人に売るなどして、少しずつ借金を返済。2009年12月、ついに同市兵庫区に、以前と同じ店名の生花店を開業させた。

 「『花は心』と、美智子さまに教わった」と、森本さん。花を束ねるときはいつも、受け取る人や贈る場面を想像する。「大変な経験をしたけど、この時代に生きてよかったと本当に思える」と笑顔を見せた。

 美智子さまが手向けたスイセンの花束は、特殊加工され、今も神戸布引ハーブ園(同市中央区)に保存されている。

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