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 神戸市北区で2017年7月、男女5人が刃物などで襲われて死傷した事件から間もなく2年がたつ。殺害された老夫婦の長女で、殺人罪などで起訴された男(28)の伯母でもある女性が4月、58歳で亡くなった。事件の遺族と被告の親族という板挟みから生活のバランスを崩し、脳梗塞で急逝した。女性の夫は言う。「妻は裁判が始まるのをずっと待っていたのに…」。公判の日程は、いまだ見通せていない。(村上晃宏)

 女性は犠牲になった老夫婦=ともに当時(83)=の長女。起訴された男は妹の長男で、老夫婦と同居していた。

 市外に暮らしていた女性は生前、現場となった老夫婦宅で神戸新聞の取材に応じてくれた。事件後、思い当たる動機がないか妹に尋ねてみたが、答えは「私にも分からない」だったという。なぜ、両親は命を奪われたのか-。真相が分からなかったからこそ、裁判の開始を待った。

 「おいっ子ではあるが、事件の重大性を考えると許せない。法廷に立つ機会があれば、極刑を求めようと思う」。女性は少し口調を強め、「深い傷を負った近隣の人には謝っても謝りきれない」とも語っていた。

 老夫婦宅の管理や近隣への対応を巡り、姉妹の間にはやがて溝が生じたが、「事件がなければ、溝ができることもなかった」。そうした負担や葛藤が重なったのか、次第に飲酒量が増え、肝臓や腎臓を悪くして入院することもあった。医師から断酒を勧められたが、やめられなかった。

 女性の夫(65)は「両親を失った悲しみ、近隣住民への申し訳なさ、妹との確執。妻に多大な負荷がかかっていた。つらさから逃れるための酒だったのかも」と大粒の涙を流す。事件からもう2年。始まらない裁判に「遅々として手続きが進まない」ともどかしさをにじませた。

     ◇

 女性は、事件前の男の様子についても詳しく語っていた。

 老夫婦と男が一緒に暮らし始めたのは約20年前。子どもの頃は農作業を手伝うこともあったが、成長すると一緒に食卓を囲むことがなくなり、食事は2階にある自室で取っていた。

 時には「暴れることもあったようだ」とも。事件の数カ月前、1階で女性と母が話していると、男の部屋から「ドン」という大きな音が聞こえた。母は「最近、ああやって床や壁を蹴る。何かされたら怖い」と話していたという。

 案内してもらった父の部屋には、クラシック音楽のCDとパソコンに関する本が多くあった。「父は『わしは100歳まで生きるんや』と言っていた。母ともよく一緒に旅行に行った」。女性はそう言って涙ぐんでいた。

【神戸・北区5人殺傷事件】2017年7月16日、神戸市北区有野町有野の民家などで5人が相次ぎ襲われ、この家に住む男(28)が逮捕された。殺害されたのは同被告の祖父母、近所の女性=当時(79)。他に同被告の母親と近隣女性も重傷を負った。神戸地検は精神鑑定のため2度の鑑定留置を実施し、18年5月に殺人や殺人未遂などの罪で起訴。ただ、公判前整理手続きの見通しは明らかになっておらず、公判も始まっていない。

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