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同僚が刺殺され、自身も重傷を負った事件を伝える記事を読む後藤斉久警視=兵庫県警本部
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同僚が刺殺され、自身も重傷を負った事件を伝える記事を読む後藤斉久警視=兵庫県警本部

 大阪府警の男性巡査が包丁で刺され、拳銃を奪われた大阪府吹田市の交番襲撃事件から、16日で1カ月となった。傷が心臓まで達し、一時は命も危ぶまれた巡査はその後、奇跡的に回復。その吉報を人一倍喜んだ警察官が兵庫県警にいる。捜査3課次席の後藤斉久(なおひさ)警視(54)。1986年7月14日、神戸・三宮で職務質問中、同僚の男性巡査=当時(26)=が目の前で凶刃に倒れ、自身も生死の境をさまよった。危険と隣り合わせの職務でどう身を守るか。悔しさを原動力に教訓を後輩に伝えている。(那谷享平)

 1カ月前の日曜日、妻に促され、テレビのニュースに見入った。「大阪府警の警察官が刺され重体」。刺された巡査は、亡くなった同僚と年齢も階級も同じ。苦い記憶がよみがえった。「とにかく助かってくれ」

 生田署員だった33年前の夏の日、後藤さんは同僚と未明の三宮の繁華街で不審な男に職務質問した。しかし男は突然逃走。夢中で後を追った。「『悪いやつを捕まえる』の一心だった。今なら無線や警棒を用意していたと思うが、若過ぎて最悪の事態を想定できていなかった」

 前を走る同僚が男に追いついた途端、はじき飛ばされた。続いて男を取り押さえようとした後藤さんも、腹に2回強い衝撃を感じた。殴られたと思ったが、真っ赤に染まる服を見て2人とも刺されたと気付いた。同僚に駆け寄り傷を押さえたが、血が止まらない。「早く病院に!」。自分の腹の傷も焼けるようだった。やがて意識を失った。

 目が覚めると病院で、同僚は亡くなったと聞かされた。自身も胃腸に達する傷だったが、生き残ったことが同僚の家族に申し訳なかった。辞職も考えたが、上司から「一緒にかたきを」と説かれた。復帰後、男の顔を知る後藤さんは事件の捜査本部に配置された。

 男が殺人などの容疑で逮捕されたのは翌年1月。手掛かりは、後藤さんが全国の警察にある膨大な資料から見つけた顔写真だった。男は有罪判決を受けたが、同僚が戻らないむなしさが残った。

 事件は、防刃ベストの導入など、警察官の安全対策を見直すきっかけになった。後藤さんは白バイ隊員を目指していたが、「お前は現場の苦しみが分かる。刑事になれ」と署長に言われ、刑事畑を歩みだした。

 6月下旬、襲撃された大阪府警の巡査の意識が戻ったと聞いた後藤さんは「本当に良かった」と繰り返した。同僚を亡くした自分は、傷も後悔も消えない。部下には同じ痛みを味わわせたくないから、毎年7月になると会議などで事件に触れる。あらゆる状況に備え、事前に複数の対応策を考えて動くよう伝えている。

 「負傷した経験は誇れることではない。ただ、同僚の分も頑張らなければいけないという思いがある」

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