「神戸ワイン」が特需に沸いている。6月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に供された効果で、月間販売量の3~4倍の受注が舞い込んでいる。神戸みのりの公社(神戸市西区)が醸造する神戸ワインは販売から35年。大量の在庫を抱え、低迷した時期もあったが、品質向上に努め続け、国内外で認められる「ブランド」になりつつある。(山路 進)
サミット初日の6月28日、大阪市内で開かれた夕食会に、神戸ワインが登場した。赤の最上級品「ベネディクシオン ルージュ」(750ミリリットル、3024円)。赤はこの1本のみだった。この事実が同公社に伝えられたのは翌29日の朝だったという。
その後、外務省のホームページに掲載されると、同公社の直営店には来店者が続出。週明けの7月1日以降は酒類卸からの注文も相次いだ。
通常は月約500本を販売するが、サミット後は受注を伸ばし、すでに2千本を超えた。白の「ベネディクシオン ブラン」(同、同)も、通常の3・3倍の売れ行きという。
同公社は8月に入ってから、瓶の大きさを従来の720ミリリットルから国際標準の750ミリリットルに切り替える予定だった。ところが、この特需で従来サイズは完売。当初より前倒しで750ミリリットル瓶への更新を迫られた。同公社の源田英生営業課長(47)は「これほどの勢いで売れるのは初めて。名だたるワイナリーがある中で選ばれたのは全くの想定外だった」と頬を緩ませる。
神戸ワインは、同公社が1984年から販売。ここまで険しい道のりをたどってきた。
販売開始14年後の98年度にはワインブームに乗り、ピークとなる約110万本(720ミリリットル)を売り上げた。しかし、ブームの陰りや低価格の輸入ワインに押され、翌99年度には激減。2001年度には在庫が380万本にまで膨らんだ。
同公社は「量より質」にシフト。赤白ともブドウを中級種から高級ワイン向けの品種に切り替えた。
さらに、新しいルールも追い風に。18年から、国産ブドウを100%使い、国内で製造した品だけを「日本ワイン」と表示するようになり、神戸ワインも含まれる。量販店などは売り出しを強化しており、神戸ワインの出荷量も昨秋以降、じりじりと伸びている。
上向き調子の中で得た大舞台での好評価。源田課長は「追求してきた味が、首脳らに飲まれるまでに認められ、素直にうれしい。今後もおいしさや個性をどんどんPRしていきたい」と意気込んでいる。
