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カツ丼を調理する「大力食堂」の藤坂さん。超デカ盛りの「大」はもう作らないと決めた=西宮市甲子園網引町
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カツ丼を調理する「大力食堂」の藤坂さん。超デカ盛りの「大」はもう作らないと決めた=西宮市甲子園網引町
カツ丼大の販売中止を知らせる張り紙=西宮市甲子園網引町
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カツ丼大の販売中止を知らせる張り紙=西宮市甲子園網引町
カツ丼小(並)でもかなりの大盛。おわんに取り分けて食べる人も=西宮市甲子園網引町
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カツ丼小(並)でもかなりの大盛。おわんに取り分けて食べる人も=西宮市甲子園網引町

 「カツ丼の(大)はやめました」-。熱戦が繰り広げられている兵庫県西宮市の甲子園球場近く、超デカ盛りカツ丼で有名となった「大力食堂」にそんな張り紙が掲げられた。1966年の創業以来「おなかをすかせた高校球児のために」と続けてきた。やめた理由は「インスタ映え」目的でやって来た客の食べ残しだったという。高校野球ファンでにぎわう店を訪ねた。(広畑千春)

 甲子園球場の西、新甲子園商店街の一角にある同店。店内には、高校の部活からプロ野球選手まで壁一面どころか天井にまで色紙が飾られている。

 兵庫県北部の八鹿町(現養父市)の農家で育ち、神戸・元町の食堂で腕を磨いた店主の藤坂悦夫さん(81)は21歳で独立し店を開いた。「高校球児も気軽に来て、満腹になれるように」と考えたのが大盛りカツ丼(正式には「カツ丼大」)だった。

 ご飯の量は2・8合。たっぷりのだしで玉ねぎを煮込み、カツを入れてだしを吸わせたら、特大の卵を溶いてかける。テーブルに届いた時点で既にどんぶりからあふれている。このボリュームで700円(近年は原材料費の値上がりで800円)という脅威の安さだ。

 「お客さんはわざわざここまで足を運んでくれとる。もうけは二の次。『おいしかった』って言うて帰ってもらえたら」。そんな人柄も魅力で、店は繁盛し、何度もテレビ局の取材が入った。

 ところが数年前から、「大」を頼んでは半分以上残して帰る客が相次ぐようになった。「スマホで写真を撮ってな。残った分は捨てるしかないけど、もったいないやろ。それ見とったら、何かもう情けのうなってな」と肩を落とす。

 毎朝7時過ぎから仕込み。高校野球シーズンは90キロ近い米を洗い、100枚以上のカツを揚げて客を出迎えた。定休日も年末年始ぐらい。年齢も重ね、立ち仕事で痛めた腰が悪化しながらも「お客さんのために」と続けてきたが、半年ほど前「もうやめどきや」と決意したという。

 カツ丼は現在、小(並)600円のみだが、それでもご飯の量は1合以上。東京から高校野球観戦後に初めて訪れた男性(71)は「テレビ番組で『大』を見て来たが、これ(小)でもおなか一杯。『大』が無くなったのは残念だけれど、マスターの気持ちを考えると、つらい」と話す。

 「お客さんには『えっ、やめたんですか』とびっくりされるけどな」と藤坂さん。「残す客がいなくなったら復活も?」と尋ねたが、「ない」と首を横に振った。

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