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関西大学人間健康学部教授の神谷拓さん=堺市、関西大学堺キャンパス
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関西大学人間健康学部教授の神谷拓さん=堺市、関西大学堺キャンパス

 兵庫県尼崎市立尼崎高校のバレーボール部と硬式野球部で体罰が表面化するなど、学校部活動の指導者による暴力が後を絶たない。生徒に手を上げ、厳しい言葉を浴びせて支配する手法を根絶するにはどうすればいいのだろう。多くの中学、高校で3年生が引退し、下級生による新チームの活動がスタートする中、「生徒が自分たちで強くなる部活動指導」の著書がある関西大学人間健康学部の神谷拓教授に話を聞いた。(小川康介)

 -市立尼崎高校の体罰をどう捉えていますか。

 「28歳や25歳の若い臨時講師が体罰を加えた点に特徴があります。大阪市立桜宮高校バスケットボール部の事件が起きたのが7年前で、あのとき亡くなった生徒とほぼ同世代。あれだけ騒がれ、議論されたのに当事者世代に響いていないという反省が必要です。これからの指導者はこうあるべきだと大人目線で語られてきましたが、子ども目線の体罰根絶が語られていません。また、身分が安定しない臨時講師にとって暴力や暴言はすごくリスキーなことなのに、彼らが“伸び伸びと”やってしまうような、体罰を容認する学校文化があったことも問題です」

 -競技成績が生徒の大学進学に直結するという現状があります。

 「勝利至上主義はだめだと言っても、推薦入試の評価は競技成績に絞られています。通常のルールを超え、顧問が同じ学校に居続けられるというのも、この入試制度に支えられています。3、4年で異動したら強化なんてできないよって。校長も、多少問題があっても指導者を変えると生徒が集まらないのでは、と考えます。長く居る人間は権力を持ち、周囲は何も言えません。臨時講師もそういう人の下につきます。入試改革で主体的活動をどう評価するかが問われていますが、今の評価基準のままだと問題は繰り返されます。競技成績の他に何を評価するか、代替案を示し切れていません」

 -神谷さんは部活動の「自治」を提唱しています。

 「生徒が運営方針、競技成績の目標を決め、練習の内容を決めるのは誰か、キャプテンを決めるのは誰かなど、部活動で生じうる21項目の課題をチェックシートに整理し、実践しています。勝つこと以外に何を経験するのか、きちんと可視化することが重要です」

 「もちろん大会での優勝は目指しますが、生徒たちがルールや試合方式を調べて対策を練る、戦術や作戦は先生と一緒に決めて自分たちの意見を反映させる、という具合に、勝つまでの過程にもっとこだわりましょう、ということです。推薦入試の評価項目について、私なりの代替案です」

 -実際にそのような取り組みをしている学校があるのですね。

 「一緒に取り組んだ山梨県の学校の剣道部では、先生が『生徒に自主的にやらせている』という認識でしたが、チェックシートに丸を付けてみると、ほとんどの項目は『先生が決めている』となりました。そこで、どの項目なら生徒ができるかを話し合い、例えば練習計画を立てると決めたなら、キャプテンがどういう練習がいいか発表する、という文化をつくっていきました。面白いことに、会計係になった生徒がお金の流れに興味を持ち、大学の経済学部に進学しました。部活動には本来、豊かな学びがあります。3月までいた宮城県では塩釜市の教育委員会が賛同し、市内の中学校で実施しました」

 -実績のある指導者は考え方を変えるのが難しそうです。

 「クラブという言葉の語源からすると、課題が生じた際にみんなが集まり、解決しようというのが本質。そこに立ち返れば、暴力が入り込む余地はありません。体罰はクラブを根底から否定するもの。競技力を弱くしろと言っているのではなく、競技力を高めながら生徒たちが自ら考え、話し合いながら運営していく文化をつくってほしい。教師は本来、子どもが課題を解決するように導くプロであり、そこに専門性を発揮すべきです。体罰なんかなくても強くなれる道があります。強豪校こそ、モデルケースになってほしい」

【かみや・たく】1975年埼玉県生まれ。中京大体育学部卒、和歌山大大学院、筑波大大学院修了。宮城教育大准教授などを経て4月から現職。専門はスポーツ教育学。

◇記者のひとこと

 今、体罰を受けている生徒たちには「その場を離れるという選択肢があっていい」と語る神谷さん。スクールカウンセラー、教育委員会、競技団体、日本スポーツ協会など「相談するなら複数の人に」と助言する。

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