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須原隆一さんが育てる「HyogoSake85」。丹波の気候に適した特徴を持つ=丹波市市島町中竹田
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須原隆一さんが育てる「HyogoSake85」。丹波の気候に適した特徴を持つ=丹波市市島町中竹田
「HyogoSake85」を完成させた兵庫県立農林水産技術総合センターの杉本琢真さん=加西市別府町
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「HyogoSake85」を完成させた兵庫県立農林水産技術総合センターの杉本琢真さん=加西市別府町

 昨年、兵庫県で10年ぶりに開発された酒米「Hyogo Sake 85(ヒョウゴ サケ エイティーファイブ)」。これで醸した清酒は雑味が少なく、香りも高いと、早くも左党の人気を集めている。兵庫県丹波市では農家や蔵元、開発した県立農林水産技術総合センター(加西市)などが連携し、新品種の普及に向けて、安定的な生産法の確立に奮闘している。(真鍋 愛)

 同センターの酒米試験地が新酒米の前身「兵系酒八十五号」の開発に着手したのは、1986年。父系に県のブランド酒米「山田錦」、母系に韓国産の「水原258号」の花粉を使って交配した。米の中心部にあり、こうじ菌が繁殖しやすい「心白(しんぱく)」が大きいため、表面を削る割合が少なくても醸造しやすい。

 また、新酒米は山田錦より稲が低く、台風の倒伏被害に遭いにくい。さらに、稲穂が茎の一番上に生える「止葉(とめば)」より低いため、スズメの被害も抑えやすいという。冷涼な気候での栽培に適し、田植えから収穫までの期間は山田錦より短い。開発に携わった同センターの杉本琢真さん(45)は「育てやすく、醸造もしやすい」と太鼓判を押す。

 昨年は丹波、但馬地域の三つの酒造会社が新酒米を使った純米酒を販売。丹波市市島町上田の山名酒造は昨年に引き続き、6月に一升瓶を400本、ワインボトルサイズの720ミリリットル瓶で生原酒を480本、火入れ酒を1550本発売し、いずれも8月末までに完売した。山名純吾社長(59)は「昨年に比べて味に膨らみが出て、鋭さを備えた辛口をキープしつつ、ふくよかな味わいになった」と自信をのぞかせる。

 蔵元が醸造への熱意を高める一方、生産者側も収量アップと作付面積の拡大に力を注いでいる。

 7月下旬、丹波市市島町中竹田の約90アールの水田では、新酒米の稲が穂ぞろい期を迎え、こうべを垂れ始めていた。酒米を育てる須原隆一さん(35)は「昨年は水不足で思っていたより収量が少なかった。今年は植え付け場所の条件を整え、生育は順調」と話した。8月下旬、昨年を上回る約500キロ(10アールごと)の米が収穫されたという。

 須原さんの水田には月1回、同センターやJA丹波ひかみの調査員らが訪問。稲の生育や病害虫の有無を観察し、情報を共有した。同JAは「酒蔵の米の需要を加味しながら、将来的に市内で栽培地をさらに増やしていければ」と期待を口にする。杉本さんも「涼しい気候と、保水力がある粘土質の土壌に恵まれた丹波は、栽培に最適の土地。連携し、普及を進めたい」と意欲的だ。

 須原さんは「丹波は、米生産者と蔵元が近いのも強みの一つ」と強調。「互いの顔が見えるので、一体感を持って酒造りに取り組める」と話す。ワインは原料となったブドウの産地の気候や土壌、風土などを指す「テロワール」が重視されるが、清酒も「丹波地域、市島地域でつくったというストーリーを加味して展開するといいのでは」と夢を描く。

■「暦」作成安定生産の鍵

 新酒米「Hyogo Sake 85」の普及の鍵を握るのは、安定的な生産に欠かせない栽培暦の作成だ。兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市)は、敷地内にある水田や丹波市内の酒米農家での実験を踏まえ、来年度中の暦完成を目指している。

 同センターの水田では、10アールごとに区画を設定し、肥料に使うチッ素の量を1区画ごとに2キロずつ変えて対照実験を行った。今年は田植えの時期をずらす「作期試験」も行っており、収穫量や品質の変化を比較する予定だ。

 センター内で試行した結果は、実際の栽培地でも有効性を見極める。今年、延べ1・6ヘクタールの水田で新酒米を栽培した丹波市では、センターでの実験と同様に肥料のチッ素量を6キロと8キロにして収量を比較。同センターが適量と判断した8キロが、栽培地でも有効であることが証明された。

 同センターの杉本琢真さん(45)は「来年の現地での実証実験を踏まえ、問題がなければ暦は完成する。よい暦ができれば、新酒米を作る農家が増えるはず」と意気込む。

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