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山口圭司社長
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山口圭司社長

 大阪の地下鉄心斎橋駅から徒歩数分のところに、ハンモックのしゃれた内装と有機野菜中心のメニューが売り物のカフェレストランがある。丹波市春日町の農地所有適格法人「パブリック・キッチン」の直営店で、社長の山口圭司さんはソフトウエア会社役員を辞めて起業したIターン組だ。「若い世代が働き口として、当たり前のように農業を選べるようにしたい」と理念を掲げる。経緯など詳しく話を聞いてみた。(内田尚典)

 -野菜は自社栽培なのですね。

 「春日地区の5カ所に計約3ヘクタールの畑があります。1割を自社で所有し、残りは地元の方からの賃借です。露地とビニールハウスで常に20種類の野菜を有機栽培しています。年間を通すとナスやトマト、カボチャ、コマツナ、スイスチャードなど約70種類になります」 「カフェは現在大阪で2店舗、宝塚で1店舗を営業中です。東京の吉祥寺店は入居物件の老朽化で今年5月に閉じました。首都圏で丹波の有機野菜というと関西以上に受けがよく、いずれまた、出店したいですね。丹波店は人手が足りずに7月から休んでますが、9月中に再開します」

 -経営は順調?

 「売上高は年間約1億円。地方で生産し、都市部で提供するまで一貫して手掛けるのが強みです。流通ルートに乗せないので、ふぞろいや少しの傷があっても捨てずに使いますから、無駄が少ない。ハウスの温度や湿度の管理、生育状況のデータ蓄積などのIT化に自前で取り組み、効率化で経費を抑えました。少しずつ畑を広げながら人を増やし、5年後にカフェ10店舗を目指します」

 -なぜ、丹波なのですか。

 「奈良出身で山や田畑に囲まれて育ったので、第1次産業に魅力を感じていました。ただ、農家出身でないのに、いきなり飛び込む自信はありませんでした。最初に開業した有機野菜のカフェレストランで料理を手掛け、仕入れ先を探すうちに丹波の農家とつながりができ、足掛かりになりました」

 「もともと会計やパソコンなど複数の専門学校に通ってまして。その後、大阪のベンチャー企業に勤め、取締役として上場の準備を担当しました。起業志向が強まり、30歳目前に大阪で会社を設立して手掛けたのが、有機野菜のレストランです。2014年に農業法人化したのを機に丹波に移転しました。従業員は現在、パートを含め15人ほどです。このうち丹波で農業を担当する5人の正社員は、私と同じIターンです」

 -耕作放棄が増える農村の活性化について、自社のウェブサイトで、Iターンの移住者を増やすだけでは不十分と記していますね。

 「Iターン就農は畑を整え収穫するまでに時間がかかる上、販路の確保に苦労します。兼業だったり相当の蓄えがあったりすれば、安価で農作物を売っても生活できるでしょうが、独立後に助成金がなくなり持ちこたえられなくなるなど、厳しい現実をよく聞く。普通に休みが取れ、子どもを養えるだけの収入がある農業の仕事を増やしたいと思っています」

 -そのための起業、ですか。

 「そんな思いが強まりました。今年1月、新たに森林管理用のスマートフォンアプリを開発する別会社をつくりました。山ごとの木の種類と生育の情報を電子地図に重ね、間伐や植樹など管理活動の記録も残すことができるサービスです。全国で山の荒廃が進んで土砂災害の防止が課題となる一方、植林から50年以上が経過し、切り出しの適齢期を迎えた木が数多くあります。兵庫県内外で、有効利用を検討する役所や林業者、団体への提案を始めたところです」

 -各地で今、地方自治体が起業を重視し始めています。どんな支えが必要ですか。

 「神戸市がITベンチャーと連携して行政課題の解決を目指す取り組みに注目しています。農林漁業の分野でも新しい挑戦を呼び込み、連携が広がればいいなと期待しています。資金調達のしやすさなど、東京は確かに恵まれています。田舎で働く良さを感じつつ、志の高さで負けないよう刺激を求め続けます」

【やまぐち・けいじ】1981年奈良県五條市生まれ。2011年、パブリック・キッチン設立。14年から野菜の生産を始める。19年1月、森林管理向け地図アプリ開発会社マプリィを設立する。

<記者のひとこと>

 取材後、実りの季節を迎えた丹波の田園地帯に車を止めて見入った。「地方の資源を生かし、都市部や海外で通用するサービスをつくりたい」と山口さん。田舎の兼業農家で育った者として、とても気になる。

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