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犠牲になった愛娘の思い出を語る母美奈子さん(左)と父卓さん=兵庫県稲美町森安
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犠牲になった愛娘の思い出を語る母美奈子さん(左)と父卓さん=兵庫県稲美町森安
放火され、焼け焦げた部屋から見つかった遺品のリスト
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放火され、焼け焦げた部屋から見つかった遺品のリスト
友花里さんが愛用していたデニム。膝から下は焼け焦げて残っていない
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友花里さんが愛用していたデニム。膝から下は焼け焦げて残っていない
母校での実習を終え、ほっとした笑みを浮かべる友花里さん
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母校での実習を終え、ほっとした笑みを浮かべる友花里さん

 兵庫県稲美町出身で千葉大4年の荻野友花里さん=当時(21)=が殺害された事件は、21日で発生から10年を迎える。友花里さんの両親はこの間、裁判員裁判をはじめとする司法制度に翻弄されながら、最愛の娘を奪われた喪失感と向き合い続けてきた。「娘を失ったつらさは年々、深くなっていく。悲しみが薄れることは一切ない」と嘆きつつも「犯罪被害者の視点に立った司法になるよう、声を上げていきたい」と話す。(津田和納)

 居間に飾られた遺影の中から、友花里さんがこちらに笑みを向ける。まとっているのは、青色の振り袖。成人の記念に撮影した1枚が遺影となった。一角に設けられた祭壇には、今も遺骨が置かれている。

 「納骨しなさいって言われたけど、そばに置いておきたくて…」と母の美奈子さん(66)。写真に収まる姿からも「その場にいるだけで、周りがパッと明るくなった」という友花里さんの性格が感じ取れる。

 誕生日ケーキのろうそくを吹き消すあどけない表情。母校での教育実習を終え、ほっとした顔で花束を抱える姿。生きていれば、今年で31歳。父卓さん(70)は「想像するけど、21歳の友花里の姿しか思い出されへん」と目頭を押さえる。

 10年前、千葉県警から電話があった。「友花里さんが焼け死にました」。見知らぬ男が部屋に押し入り、包丁で胸や首を刺された上、火を放たれた。同県警は約1カ月後、強盗殺人容疑で堅山辰美受刑者(58)を逮捕した。

 事件は裁判員裁判の対象となった。被害者が1人の強盗殺人事件で、死刑判決が出るかに注目が集まった。

 両親は法廷に立ち、思いをぶつけた。涙ながらに意見陳述書を読み上げた。「友花里があなたに何をしたっていうんですか」。「死刑以上の極刑を望みます」。長引く審理で神経はすり減った。裁判官3人と裁判員6人は死刑判決を出した。

 「思いをくみ取ってくれた。やっと、娘に報告ができる」。少し肩の荷が下りた気がした。しかし二審・東京高裁は無期懲役に減刑。最高裁も高裁判決を支持した。裁判員裁判の破棄率は年々上昇しており「友花里の裁判が先例になっていくのが怖い。結局、職業裁判官によって素人の判断が修正されるのなら、裁判員裁判は茶番。今すぐやめたほうがいい」と美奈子さんは唇をかむ。

 一方で、娘の死を無駄にしたくないと、両親は被害者遺族を同じ立場から支え続ける。兵庫県加古川市で2015年12月に殺害された大山真白さん=当時(20)=の遺族とも手紙や裁判の傍聴を通じて親交を深めてきた。子を奪われた苦しみ、犯人への憎しみ、社会へのやるせなさ-。「この感情は、経験した者にしか分からない」

 それでも、世間の関心が薄れることを危惧し、美奈子さんは講演を重ねてきた。「何を訴えても変わらないと思う気持ちもあるけど、このままでは友花里に怒られる。裁判には、もっと被害者側の視点や配慮を取り入れ、補償の制度も確立してほしい」と願っている。

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