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防鳥獣ネットにひっかかり、身動きがとれなくなったコウノトリを救護する松本令以さん=2018年5月(コウノトリの郷公園提供)
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防鳥獣ネットにひっかかり、身動きがとれなくなったコウノトリを救護する松本令以さん=2018年5月(コウノトリの郷公園提供)

 2002年8月5日、1羽の野鳥が、コウノトリの郷(さと)公園(兵庫県豊岡市祥雲寺)に舞い降りた。飼育コウノトリが100羽を超え、野外に放す計画がいよいよ現実味を帯びていた頃だ。

 ユーラシア大陸から飛来したとみられる野生のコウノトリで、確認された日付から後に「ハチゴロウ」の愛称が付けられた。「子どもの頃、目にしていた懐かしい景色がよみがえった」と、同公園元飼育長の松島興治郎さん(78)が振り返る。ハチゴロウは、コウノトリが空を舞う、かつての豊岡の光景を人々に思い出させ、野生復帰の機運は一気に加速した。

 地元農家はコウノトリが生息できる環境づくりを急いだ。コメを無農薬や減農薬で育て、冬も水を張り、餌となるカエルやドジョウなどを増やす「コウノトリ育む農法」が広まった。

 秋篠宮ご夫妻を迎えた05年の試験放鳥は、大勢が見守る中、ついに5羽が大空に飛び立った。放鳥拠点は養父市や朝来市にも設置。千葉県野田市や福井県越前市にも増え、これまでに73羽が放たれた。韓国での放鳥もサポート。野生復帰の歯車が各地で動き始めた。

     ◇

 コウノトリは17年、全国47都道府県に飛来。順調に増え続ける一方で、新たな課題も浮かんでいる。

 初放鳥した05年~18年末の238羽のうち、延べ69羽が負傷などで救護され、36羽が死骸収容された。分析すると、防鳥獣ネットや電線など人工物によるものが計47羽(約45%)と半数近かった。

 今年は、救護や死骸収容されたコウノトリが8月末で既に15羽。過去最悪のペースという。狩猟わなの「トラバサミ」に足がかかり、指が切断された事例もあった。獣医師の松本令以(れい)さん(44)は「野外コウノトリを増やす努力をしてきたのは人。でも、人の生活のために設けられたものが、コウノトリに被害を与えている」と指摘する。

 全国的にイノシシやシカなどによる農作物被害が深刻化し、防鳥獣ネットの設置が増えている。同公園はここに着目し、市内の調査に乗り出した。コウノトリが生息したり、立ち寄ったりしている地点を確認すると、本来、設置の必要がない休耕田にネットが張られていたところがあった。手入れが行き届かず、地面にまでたるんだネットにコウノトリの脚が絡みつきやすそうな場所もあった。不必要な場所ではネットを撤去し、できればネットを柵に代えるよう農家に呼び掛けている。

 変化する環境の中で人間と野生動物は、どのような関係を築いていくのか。里山の姿はどうあるべきなのか。手探りが続いている。(石川 翠)

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