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眉村卓さん最後の掲載となった神戸新聞夕刊「随想」(2019年10月23日)
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眉村卓さん最後の掲載となった神戸新聞夕刊「随想」(2019年10月23日)

 作家の眉村卓さんが11月3日に亡くなりました。今年9月から本紙「随想」を執筆されていました。最後の掲載になった「馬鹿(ばか)話」を公開します。謹んでご冥福をお祈りします。

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 高齢者が車を運転するのは危険である。できれば運転免許を返納してほしい、という声がある一方で、しかし、ろくに公共輸送機関のないところではどうして生活しろというのか-との反論もある。そう簡単に解決する問題ではないであろう。

 先日、数人が集まったとき、この話になった。みんな、夢のようなことを喋(しゃべ)る癖があるのだ。

「そんなもの、小型の万能自動自動車を作ればいいではないか」

 1人が言いだした。もちろんそうした車が通る道は、もっと大きい車が入って来ないようにしなければならないが、と前提をつけてである。衝突のことを考えればもっとも至極だろう。

「うん。そういう車は、乗る人間の指示をみな受け入れて、正しく走るんだ」

 別の男が付け加えた。

「もちろん、前もって許可を与えていない者は、中に入れない。入ろうとすれば外に放り出す」

 と、若い女性。

「すべて自動なんだ。乗る者は到着するのを待っていればいいんだ」

「食事も作ってくれるかも」

「スピードも出るんだ。いや…空を飛ぶかもしれない」

「天を仰ぐと、数十台の車がひしめいて飛んでいて」

「ときどき、墜落するのがあって、パラシュート、ぱっと開いて」

「あははは」

 が…この位でみんな、馬鹿(ばか)話であるのを悟り、口をつぐんだ。それでも1人が、ぼそぼそと呟(つぶや)いたのだ。「だけど人間の大きな発明というのは、大抵、馬鹿話や夢想から生まれたらしいよ」

(まゆむら・たく=作家)

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