新型コロナ、被災者の交流にも影 「気持ちだけでも届けたい」
2020/03/08 12:15
東日本大震災の被災地に持ち込まれるはずだった竹灯籠=三木市志染町広野(撮影・中西幸大)
新型コロナウイルスの感染拡大が、東日本大震災の被災地と兵庫県の人々の交流にも影を落としている。宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の被災者と兵庫の支援者が毎年3月11日に行ってきた、現地での追悼行事が中止に。神戸・東遊園地での追悼の集いも、一般参加者を募ることをやめた。阪神・淡路大震災の経験を大切にする関係者は「苦渋の決断。寄り添う気持ちだけでも届けたい」と東北に思いをはせる。
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「一生懸命準備してきたので本当に残念」。三木市を拠点にする市民団体「神戸・心絆(ここな)」事務局の杉山千種さん(43)は、倉庫に山積みになった竹灯籠を見つめながら悔しがった。
心絆は、閖上地区の被災者とともに追悼行事を開催。2012年から、同地区の被災者が数多く暮らした名取市の愛島(めでしま)東部仮設住宅に竹灯籠を並べ、犠牲者を悼んできた。同仮設はひょうごボランタリープラザ(神戸市中央区)が11年から支援と交流を続けた経緯があり、兵庫のボランティアと閖上とのゆかりは深い。追悼行事には毎年約40人が兵庫から駆け付けていた。
今回は昨年5月に「まちびらき」した同地区で、初めて追悼行事を計画。心絆は1月中旬から準備を始め、約700本の竹灯籠を用意した。だが新型コロナウイルスの感染予防のため、行事の中止が決まった。
「閖上の人々は訪問を歓迎してくれる。一緒に祈りたかった」と杉山さん。遠く離れても思いを共有しようと、心絆は15日に三木市内で東日本大震災の追悼の催しを開く。閖上地区には同プラザの高橋守雄所長(71)が代表で訪ね、被災者と黙とうをささげる。
東北と兵庫の相互交流は、他にも中止が相次いだ。明石市の兵庫県立明石高校では、東北大の学生有志が4日に東日本大震災に関する出前授業を予定したが、取りやめに。神戸市長田区の災害ボランティア団体「チーム神戸」は、避難所運営で支援した宮城県石巻市などへの訪問を見送った。
神戸・東遊園地で毎年3月11日に続けてきた追悼の集いは、主催する「阪神淡路大震災1・17のつどい実行委員会」関係者5人程度のみで実施する。藤本真一実行委員長(35)は「何もしないわけにはいかない。ささやかだが、東日本の被災地にエールを送りたい」と話した。(金 旻革、竹本拓也)