現場緊迫、医療崩壊を防げ 新型コロナ 県内確認1カ月
2020/04/01 06:30
神戸市医師会の急病診療所入り口で待機する防護服姿の看護師=3月30日午後、神戸市中央区橘通4(撮影・秋山亮太)
兵庫県内で新型コロナウイルスの感染者が増加の一途をたどり、救急医療体制も揺るがしている。対処する基幹病院からは「このまま増え続けると、医療崩壊の恐れも」と悲痛な声が上がり、身近な存在の「かかりつけ医」も危機感を強める。スタッフや患者の感染拡大は、医療の提供に深刻な事態を招くため、神戸市医師会は「診療所でクラスター(感染者集団)を発生させてはいけない」と予防を図る。(井川朋宏、霍見真一郎)
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県内では3月1日に感染が初確認され、5日以降は途切れず、感染者は31日までに148人に上る。一般の救急医療体制は圧迫され、県災害医療センター(神戸市中央区)の中山伸一センター長は「感染症指定医療機関に負荷がかかり、日常の救急をある程度制限せざるをえない状況」と話す。
神戸市内では医療機関同士で話し合い、新型コロナ以外の3次救急について、同センターと神戸大病院が普段以上に患者を受け入れているという。
救急搬送患者の中に感染者がいる可能性もあり、同センターは、疑いがある数人を空気が外部に流れ出ない陰圧室に入れて検査。中山センター長は「感染者数がもっと増えたり、職員に感染者が出たりすると、医療崩壊が進む恐れもある」とする。
県内の感染症指定医療機関は9カ所で、陰圧室を備えた病床数は54床だが、一般医療機関で受け入れ可能な病床は徐々に増え、計37カ所で246床(3月27日時点)に増加した。県は、空きベッドを把握して入院先を割り振る「入院コーディネートセンター」を開設。テントなどを使う20カ所の臨時外来の設置も検討する。
国は、ピーク時の兵庫県内の入院患者は1日9800人、重症者330人と推計。県は患者が急増した場合は、無症状・軽症者の自宅療養も視野に入れる。
一方、地域の診療所も感染拡大を懸念する。職員や通院者が感染し、休診するケースも出ている。神戸市灘区のろっこう医療生協灘診療所は看護師の感染が分かり、3月27日から自主的に外来診療を休止。4月6日の診療再開まで医師が患者に電話で対応し、不安解消に努めるという。
同市医師会の休日、夜間の救急医療を担う診療所3カ所では、防護服の看護師が受け付け、新型コロナ感染の疑いがある患者を別室に移す措置をとる。これまでに陽性患者を別室に案内し、院内の感染拡大を防いだ例もある。市医師会の置塩(おきしお)隆会長は「診療所の予期せぬ感染を防ぐため、来院前に電話で連絡してもらうルールにのっとってほしい。診療所の切実な願いです」と呼び掛けている。
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