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「丹波篠山市役所」の銘板を除幕する酒井隆明市長(後列右)と子どもたち=2019年5月1日、丹波篠山市北新町
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「丹波篠山市役所」の銘板を除幕する酒井隆明市長(後列右)と子どもたち=2019年5月1日、丹波篠山市北新町
アンケート質問「丹波篠山市が誕生した理由は」への回答
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アンケート質問「丹波篠山市が誕生した理由は」への回答
アンケート質問「市名変更のニュースを見聞きしたとき、丹波篠山市に『遊びに行ってみたい』『どんな町か知りたい』と興味がわきましたか」への回答
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アンケート質問「市名変更のニュースを見聞きしたとき、丹波篠山市に『遊びに行ってみたい』『どんな町か知りたい』と興味がわきましたか」への回答
アンケート質問「『丹波』という言葉から抱くイメージ(10項目、複数回答)」への回答
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アンケート質問「『丹波』という言葉から抱くイメージ(10項目、複数回答)」への回答

 市名変更の賛否を問う住民投票を経て、2019年5月1日、兵庫県中部の農村地帯・丹波地域に「丹波篠山市」が誕生してから丸1年。「篠山市」に旧国名である「丹波」を冠することで、観光や農業などで前向きな影響が期待され、市は「経済効果は52億円以上」と発表した。

 だが、それから1年が経過した今、現場では「丹波市と篠山市が合併したの?」という誤解や、「観光客は増えたが売り上げは変わらない」という困惑なども生じていた。さらに年明け以降は新型コロナウイルスの影響で、観光施策は苦しい状況にある。神戸新聞丹波総局はインターネットアンケートを通じ、1年間の変化を探った。

■賛成56%で市名変更が実現

 篠山市は従来、「丹波地域の篠山」を表す言葉として「丹波篠山」を使い、豊かな自然や農産物を全国にPRしてきた。丹波黒大豆や丹波栗、丹波焼などは同市が胸を張ってPRする特産品だ。

 ところが04年、隣接する旧氷上郡6町が合併して「丹波市」を名乗ったことで、「『丹波篠山』が丹波市と篠山市のことであるかのように誤解される」「篠山市の特産品が丹波市で作られていると間違われる」-などと篠山市内で懸念が生まれ、市名変更を求める声が上がった。

 市名を変更するか否かを問う住民投票は、18年11月に投開票された。投票率は約70%。結果は賛成56%、反対44%で賛成が反対を約3千票上回った。市名変更は翌年5月、改元に合わせて行われた。

 変更に伴う市の支出は、市のコンピューターシステム改修や公共施設の銘板改修などが約6600万円、企業の看板変更など民間への補助が約3200万円で計約9800万円(予算ベース)だった。

 変更の効果を問おうと、神戸新聞丹波総局は20年3月6日から10日間、丹波地域以外に住む人を対象にインターネットアンケートを実施。読者らでつくる「ミントクラブ」のメールマガジンや神戸新聞社ツイッターを利用した。有効回答数は161人。居住地は兵庫県内が146人、県外が15人(丹波地域在住者は除外)だった。

■「丹波市と篠山市が合併?」 3割弱が誤解

 「丹波市と篠山市が合併して丹波篠山市になったんですよね?」

 丹波篠山市内のとある飲食店。市名変更後、男性店員は観光客からそう問われることが多いという。変更賛成派は「丹波篠山=丹波市と篠山市」という誤解を解くことを願ったが、現場では、その誤解が解かれたとは言いにくい様子も見られる。

 アンケートで丹波篠山市が誕生した理由を4択で選んでもらったところ、「篠山市が市名を変更した」と正解した人は66%(107人)だった。だが「丹波市と篠山市が合併した」と間違えた人も27%(43人)に上った。「合併」と誤った回答者は、丹波地域と比較的距離が近い北播磨地域で8%、阪神地域で20%。神戸では31%、東播磨地域では30%だった。

 前述の男性店員は「県内中心で3割なら、全国だと『合併』を選ぶ人はもっと多いのでは」と話す。

■人出に手応えも、売り上げ横ばい

 丹南篠山口インターチェンジ近く、丹波篠山市中野のホテルのネオンサインに昨年5月、「丹波」の2文字が加わった。

 「ささやまホロンピアホテル」から「丹波ささやまホロンピアホテル」へ。市名変更に合わせて山下由晶社長(51)がホテル名を変更した。

 「『丹波』は全国的な知名度が高い」と山下社長は期待する。「丹波 ホテル」でネット検索すると、以前よりホテル名が表示されやすくなった。「丹波地域に旅行したいと思う人に届くようになった」。一方、昨年5月~今年2月の宿泊者数は前年同期と比べ3%増でほぼ横ばい。3月以降はコロナ禍に苦しむ。

 アンケートで、市名変更のニュースを見聞きしたとき、丹波篠山市に「遊びに行ってみたい」「どんな町か知りたい」などと興味を持ったかどうかを尋ねた。

 その結果は、「とても興味がわいた」が15%(24人)、「少し興味がわいた」が35%(56人)、「あまり興味がわかなかった」が27%(43人)、「ほとんどない」が20%(33人)。

 昨秋、篠山城下町の駐車場には連日観光バスが止まり、多くの観光客の姿が見られた。ある土産店は「例年より人通りが多かった」とみる一方で、「売り上げは横ばい」と話す。

 市によると、昨年4~12月の篠山城跡大書院の入館者数は前年同期とほぼ同じだった。城下町から離れた市東部の屋外施設「ささやまの森公園」や「篠山チルドレンズミュージアム」は約2割増。「丹波焼」の産地である同市今田町の兵庫陶芸美術館は、夏の企画展などが好評で、約3割増だが、丹波焼の販売や陶芸体験を行う「立杭陶の郷」は横ばいだった。

 昨年11月に大阪市から観光バスツアーに参加した女性(54)は「ツアーの昼食後、自由時間は40分。美術館もお土産も気になるけど時間がない」と足早に町を巡った。神戸市から電車で訪れた女性(37)は「バスと電車の時間が気になるから、ゆっくり夜ご飯を食べるのは難しいかな。早めに帰って三宮で飲みます」と話していた。

■経済効果の行方

 神戸市中央区、元町商店街内の特産品店には、兵庫県内各地の食品が並ぶ。その中に、「丹波篠山産コシヒカリ」と大きく書かれたポン菓子があった。

 生産者は丹波篠山市今田町の小林武司さん(75)。「これまでは『篠山市産』だったけど作りかえた。作り手としては誇らしいよ。売り上げは今のところ変わらないけど…」

 JA丹波ささやまが販売するペットボトル飲料「丹波篠山茶」は、裏面に表示する原材料名を「丹波篠山産」から「丹波篠山市産」に変えた。営農指導課の寺本吉彦課長(52)は「明確な市名を表示できるようになり、分かりやすくなった」と喜ぶ。

 一方で農産物の生産量は天候に左右され、農業の担い手不足など課題も多い。「丹波篠山市産の需要が増えたとしても生産量が減っては対応できない。PR戦略と生産力アップを同時に考えないと効果が出ない」とも話していた。

 アンケートで、「丹波」という言葉から抱くイメージを10項目から複数回答可で答えてもらったところ、71%(115人)が「食材が豊か」を選び、45%(73人)が「美しい農村」を選んだ。一方、「都市部から近い」を選んだのは14%(23人)、「都市部から遠い」を選んだのは39%(63人)で、心理的な距離感も見えた。

 市名変更の経済効果は52億円以上-。18年4月、市はそんな数字を発表した。丹波篠山市の酒井隆明市長は「天候や新型コロナウイルスの影響もあり、1年の成果を純粋に検証するのは難しい」としながらも、「52億円に向けていい傾向が出ている」とする。

 住民投票で市名変更の反対の立場で活動した男性(84)は「市名は後戻りができない。いい市になったと10年後に市民が言えるよう、産業振興を一層考えていかないといけない」と話している。(金 慶順)

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