コロナ対策、武漢から学ぶ 神戸の災害NGO
2020/05/21 06:15
海外のNGO関係者らとオンライン会議で情報交換する吉椿雅道さん=神戸市兵庫区中道通2
新型コロナウイルスを巡り、神戸の非政府組織(NGO)が、中国・武漢での市民同士の支援活動を会員制交流サイト(SNS)で紹介したところ、東京のマンションがそれを参考に、新たな助け合いの取り組みを始めた。きっかけをつくった神戸のNGOは「人のつながりが希薄になりがちな時こそ、身近で困っている人に手を差し伸べてほしい」と呼び掛ける。(金 旻革)
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■市民互助、SNS発信
「布マスク一枚お使い下さい」「子供用マスク頂きました。大切に使わせて頂きます」
東京都江戸川区船堀にある5階建てマンション。1階エントランスのホワイトボードに、フェルトペンで書かれたコメントが並ぶ。下部に設置された段ボール箱内には、住民らが持ち寄ったマスクが。必要とする住民は無償で持ち帰れる。
「思っていた以上にマスクを入れてくれる人が多くてうれしい」と、この「マスクおゆずりボックス」の仕組みを考えた居住者の後藤源太さん(46)は喜ぶ。手作りのマスクのほか、自作用の型紙を入れる人もいたという。
西日本豪雨などで災害ボランティアの経験があった後藤さん。身近な助け合いをひらめいたのは、中国・武漢の市民活動の姿を知ったからだ。
武漢は新型コロナの感染拡大を受け、世界で初めて2カ月余りのロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。高齢者は買い物に出歩けず、妊婦健診のための通院も困難に。人のつながりが希薄になり、脳性まひの青年が孤独死するなどの問題も起きた。そこで現地ではボランティアが高齢者のために買い物を手伝い、病院に空き床の有無を問い合わせ、コロナに感染の疑いのある人を搬送した。
厳しい状況に合わせて生まれた支援の形。海外の被災地を支援するNGO「CODE海外災害援助市民センター」(神戸市兵庫区)の吉椿(よしつばき)雅道事務局長(52)は「日本でも起き得る事態。中国の教訓を伝える必要がある」と思い立ち、2月からフェイスブックで海外の支援活動を発信した。
後藤さんはCODEの情報で知った武漢の事例を基に、マンションで実践し始めた。マスクボックスのほか、マンション住民によるボランティアグループも組織。住民の困り事を調べ、助け合いをさらに進めようとしている。
「活動で顔の見える関係の住民が増えた」と後藤さん。「万が一の時に備え、住民が頼れる場をつくりたい」と意気込む。
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