タンタンの竹運んで20年 別れ惜しむパンダの里

2020/06/03 15:00

竹を採取する笹部会のメンバー=神戸市北区淡河町

 中国に帰ることが決まった王子動物園(神戸市灘区)のジャイアントパンダ「旦旦(タンタン)」。別れをひときわ惜しむのは、来日当初から20年間、主食の竹を提供してきた同市北区淡河(おうご)町の人たちだ。運ぶ量は週に3回、計約180キロ。食いしん坊で味にうるさいタンタンに、「最後までおいしく食べてな」と届け続ける。(西竹唯太朗) 関連ニュース 【動画】タンタンとの別れ惜しむ市民 王子動物園 放置竹林は「食べて解消」メンマ、菓子作り… 淡路で取り組み 年に2回だけ出現 夕焼け空にパンダ

 竹が野山に多く自生している淡河町。1981年の神戸ポートアイランド博覧会でパンダが展示された際、餌の提供を担った。その実績を買われ、2000年にやってきたタンタンと興興(コウコウ)の竹の供給を一手に引き受けてきた。
 農家などでつくる淡河町自治協議会笹部会の岩野憲夫さん(72)、辻井正さん(76)、西浦常次さん(71)の3人が、1週間交代で受け持つ。淡河町を中心に、北区内や三木市内の山林所有者に許可を得て竹を採取。鮮度を保つために週3回に分け、同園に運び入れる。
 「どの竹でもいいわけじゃないんや。種類を見極めなあかんから最初は手間取った」。西浦さんがしみじみ語る。
 採るのはモウソウチク、ハチクなど4種類とタケノコ。細く柔らかい種類は幹部分を、太くて堅い種類は枝部分を、5キロごと束にして運ぶ。種類別の納入量は、園側がパンダの体調や好みによって週単位で決める。辻井さんは「コウコウは若い竹が好きだったけど、タンタンは成長した竹をよく食べた。パンダは意外にグルメなんや」とほほ笑む。
 同園によると、タンタンは1日に約15キロ食べる。昨年は1年間で約7・5トン提供。2頭いた10年前までは、年間20トンにもなった。
 「顔を覚えてくれて、届けるたびに姿を見せてくれた。もう会えなくなるのは寂しい」と3人。同園は「タンタンが今まで元気に過ごしてこられたのは、皆さんのおかげ」と感謝する。
 タンタンは7月15日に貸与期限を迎え、帰国する。同園では、レッサーパンダなどほかにも竹を食べる動物はいるが、業者から納品しており、タンタンがいなくなれば笹部会による竹の提供は終わる。
 しかし、同部会は竹林の手入れを続けるという。岩野さんは「竹やぶはほっておくと荒れて、いざというときにすぐ収穫できない。いつ、次が来てもいいようにきれいな状態に保っておきたい」。新たなパンダの来神を待ち望んでいる。
■「パンダの里」名称存続(淡河)
 王子動物園や三宮から六甲山を越え、車で30分。田園地帯が広がる淡河町は「パンダの里」として、地域づくりをしてきた。
 王子動物園に供給する竹は枝葉の部分が多い。淡河町自治協議会は、余った幹の活用方法として、竹炭や竹細工を特産品として売り出した。専用の炭焼き窯も設けたこともあった。
 町内の保育園の壁には大きなパンダの絵。町民運動会や地域の祭りの名称にも、「パンダの里」というフレーズを使っている。
 同協議会の山崎昌二会長(72)は「20年前、地元を思って付けた名称。パンダがいなくなっても地域の歴史として大切に残していきたい」と話している。

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