60年前高砂から皇居へ献上「竜山石」 幻の採石風景フィルム発見

2020/06/22 14:30

舩倉光昭さんが父の隆一さんの遺品として見つけた8ミリフィルムと竜山石=加古川市東神吉町

 60年近く前の1961(昭和36)年、兵庫県高砂市から切り出された高級石材「竜山石(たつやまいし)」が、皇居で昭和天皇と香淳(こうじゅん)皇后の住居となる吹上(ふきあげ)御所(現・吹上大宮御所)の敷石として使われた。その際の採石や積み降ろし作業を写したとみられる8ミリフィルムが、作業に当たった関係者の遺品として加古川市の民家から見つかった。実際に献上されたのと同じ形の貴重な敷石1点も残されていた。(若林幹夫) 関連ニュース 昭和の後半「特撮のメッカ」と呼ばれた劇場 怪獣や異星人が闊歩 【平成逆転史】フィルムカメラとデジタルカメラ 「思い出残す」不変の本質 大阪万博の宝物があちこちに 阪神・淡路大震災で「一時預かり」

 映像を記録していたのは、竜山石を切り出した高砂市の「長谷川石材」に勤め、2013年に92歳で亡くなった舩倉隆一さん。長男で県職員の光昭さん(63)が今年2月、加古川市東神吉町の自宅に残されていた遺品のフィルムから映像を確認した。
 自宅に残されたフィルムは十数本あり、順にDVDへのダビングを進めていた際に見つけた。映像はカラーで10分程度。高砂市内とみられる石切り場での発破作業で大きな石の塊が落下する様子、のみやハンマーで石を割る作業員、約1メートル四方の直方体の石をトラックから降ろす作業が写されていた。
 切り出された石はいったん、たつの市御津町にある別の石材会社で加工されたという。1枚ずつわらで包まれた後、搬送のため丁寧にトラックに積み込まれる様子も収められていた。
 光昭さんは隆一さんから、作業を撮影していたことを聞かされていた。「父は生前『もう一度映像を見たい』と捜していた。私も幼い頃、トラックが走る場面の映像を見たことを覚えており、記憶と合致した」と話す。
 また自宅の勝手口のそばには約30センチ四方、厚さ約6センチの石が長く置かれていた。片面に「皇居天皇陛下吹上御苑御使用石材」と書かれており、光昭さんは「作業の際に同じ石材を譲り受けたのでは」と推察する。
 高砂市阿弥陀町の生石(おうしこ)神社には、竜山石を削って造られた巨大石造物のご神体「石の宝殿」がある。光昭さんは、フィルム映像をダビングしたDVDを「PRに活用してほしい」と、同市の市民グループ「石の宝殿研究会」に寄贈した。
 同研究会副会長の高岡一彦さん(73)は「60年前は石の加工や運ぶのも全て人力で、当時の苦労が分かる。竜山石が皇居に使われていたことに値打ちがあり、広く知ってほしい」と話している。

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