下水から探る「第2波」兆候 県と神戸市が試料提供
2020/07/03 06:30
神戸市内最大量の下水を扱う東灘処理場。水色の建物で、研究のために下水を冷凍保管している=神戸市東灘区(同市提供)
下水から新型コロナウイルスを検出し、感染拡大の兆候を探る研究を兵庫県と神戸市、研究者らが始める。国内外では下水中のウイルス検出に成功し、感染者が増える前に傾向がつかめることが分かっている。下水に含まれるウイルス量の変化を追うことができれば、次の感染拡大を早期に察知することが期待できる。
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日本水環境学会(東京都)によると、感染者の排せつ物にウイルスが含まれていることから、オランダやオーストラリア、フランスなどで調査研究が広がっている。国内でも、同学会に属する大学教授らが約30の自治体に下水提供を呼び掛けている。
富山県立大と金沢大は3~4月、富山、石川両県の下水処理場で計27の試料を採取。100倍程度に濃縮後、PCR検査を施すと、うち七つのサンプルで陽性が出た。両県で10万人当たりの感染者数が1人以下の時期でも散発的にウイルスが検出された上、感染者数が増える7~10日前には検知されていたという。山梨大と北海道大のチームも山梨県でウイルスを検出した。
兵庫県内での調査は、金沢大、富山県立大、京都大が実施。県は武庫川上流浄化センター(神戸市北区)と武庫川下流浄化センター(尼崎市)、神戸市は東灘処理場(神戸市東灘区)の下水を提供する。
同市は5月から同処理場に流入してきた処理前の水と、処理を終え海に放出する直前の水を毎週各300ミリリットルを収集し、冷凍保管している。順次、大学側に提供していくという。
技術が確立されれば、感染把握が難しい無症状患者の察知も期待される。兵庫県の下水で研究に取り組む金沢大の本多了准教授(42)=環境微生物学=は「すぐに実用化は難しいが、ウイルス検出手法の信頼度を高め、感染を早期につかむ方法として自治体に提案できれば」と話している。(初鹿野俊)
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