暴排条例改正の背景 組員と交流、犯罪の入り口に
2020/07/10 06:00
神戸新聞NEXT
兵庫県警が県暴力団排除条例(暴排条例)の改正に乗り出す背景には、特定抗争指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)によるハロウィーン行事に加え、組員と親交を持った未成年による凶悪事件の発生がある。「組員が怖くて逆らえなかった」。今年3月、京都府内で男性の遺体が見つかった殺人、死体遺棄事件で、組員とともに逮捕された少年は調べにこう供述したという。
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暴力団と青少年の接点では近年、山口組のハロウィーン行事が注目を集めてきた。抗争激化前の2018年秋には、約千人もの家族連れなどが総本部で組員から菓子を受け取った。
こうした暴力団の動きは住民懐柔策の一環とみられ、捜査員は「子どもが組員に親しみを覚え、将来、組に加入したり犯罪に巻き込まれたりする危険性が高まる」と懸念してきた。
県警内部で暴排条例改正に向けた議論が始まったのは昨年秋ごろ。その矢先、捜査員たちの懸念が現実のものとなる事件が起きた。
昨年11月末、同県加古川市内で車が燃やされる事件が発生。持ち主の男性は殺害され、今年3月、京都府内の山中で遺体が見つかった。一連の事件では、中心人物の特定抗争指定暴力団神戸山口組系の組員が殺人容疑などで逮捕されたほか、9人の少年が逮捕された。
捜査関係者によると、一部の少年は知人を介して組員と知り合い、事務所に呼ばれたり、食事をおごられたりするようになったという。親しくなるにつれ、組員に逆らえない雰囲気ができていったとみられる。
神戸家裁姫路支部は、逮捕された少年たちの処遇を決定する際、少年たちが事件に関与した背景に、組員への恐怖や絶対的な上下関係があったと指摘した。
事件を受け県警は条例改正案の準備を加速。このほどまとめた素案では、組員の青少年への働き掛けを規制するだけでなく、暴力団排除の意識向上のため、保護者や教育機関の努力義務なども明記した。ある県警幹部は「子どもだけでなく、保護者にも暴力団の怖さを正しく理解してもらう必要がある」とする。
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