アマビエ人気にあやかる? 妖怪ゆかりの地で対応二分

2020/07/25 15:00

神社の護符に描かれたアマビエ=姫路市本町、姫路護国神社

 コロナ禍で一躍脚光を浴びた疫病よけの妖怪「アマビエ」。会員制交流サイト(SNS)にはイラストの投稿が相次ぎ、神社の護符から菓子、雑貨まで関連商品も次々に登場した。ただ、妖怪ゆかりの地の反応は一様ではない。かっぱの人形などで有名な兵庫県福崎町は一定の距離を置き、アマビエが現れたと伝わる熊本県は積極的に活用する。ウイルスが猛威を振るう中、ブームは続くのか。(井上太郎) 関連ニュース 江戸期の妖怪アマビエ、なぜ流行? 「日本人ならでは」「娯楽求め」 “あやしい”町おこし「柳田国男が怒るかも」 誤解を元に造形?妖怪あちこちに 【写真】病気封じの“キュウリお守り”

 「『半魚人』のリアルを追究すると、さすがに気色悪いので…」。兵庫県福崎町で、かっぱやてんぐなどの妖怪人形を仕掛けた町職員小川知男さん(45)が苦笑いする。
 姿を描き写すことで疫病を鎮める-との言い伝えにちなみ、ユーモラスなデザインがSNSなどで広がったアマビエ。だが、江戸期の瓦版が伝える元の姿は、上半身がうろこに覆われ、長い髪にとがった口という怪しさの極み。妖怪人形のこだわりである繊細な造形で表現するには、ためらいがあるというわけだ。
 一歩引く理由は、ほかにもある。同町出身の民俗学者柳田国男が全国の言い伝えをまとめた「妖怪談義」には、アマビエの記述が見当たらない。小川さんは個人的な見解ながら「伝承がないのに瓦版で登場するのはやはり疑問。『ビジネス妖怪』感が強い」と慎重な姿勢を貫く。
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 妖怪を描いた漫画家水木しげるさんの出身地、鳥取県境港市。観光名所「水木しげるロード」には177体の妖怪の像が並ぶが、アマビエはいない。
 水木しげる記念館によると、ブームの広がりに合わせて「アマビエが見たい」との問い合わせが増加。アマビエと同様に疫病を退けると伝わる、四つの目を持つ鬼神「方相氏(ほうそうし)」の像が同ロードにあることを紹介したが、反応は薄いという。
 「ご利益だけで語れないというか、やっぱり見た目のかわいらしさも大事なんでしょう」と担当者。記念館の会員証のデザインは、これまで水木さんの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズだったが、コロナ禍の早期収束を願い、「水木しげるの続・妖怪事典」に描かれたアマビエに変更した。
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 肥後の海から現れたと伝わるアマビエの“出身地”の熊本県はPRに積極活用する。人気マスコット「くまモン」が、長髪とうろこをまとってアマビエに扮(ふん)し、手洗いを呼び掛ける動画を投稿するなどしている。
 県知事公室くまモングループによると、県内ではアマビエのグッズ開発も盛んといい、担当者は「(くまモンはアマビエを)ライバルというよりも、熊本を共に盛り上げる仲間と考えているようです」と話す。

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