映画で問う戦争とは 「東京裁判」など元町映画館で連続上映
2020/07/27 14:30
「蟻の兵隊」を撮った池谷薫さん
「東京裁判」など戦争を扱った3本のドキュメンタリー映画が8月、神戸市中央区元町通4の元町映画館で連続上映される。直接戦争を知る世代が次々と鬼籍に入る一方、新型コロナウイルス禍もあり社会の硬直化や分断が進む現在。主催者らは「あの戦争は何だったのか。映画は考える手掛かりになるのでは」と話す。(片岡達美)
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戦後75年の夏、同映画館は過去の上映作品から3本を選んだ。1983年公開の「東京裁判」(上映は8月1~7日、午後2時40分)は昨年、4Kデジタルリマスター版で再公開された。東条英機らA級戦犯の法廷での姿をとらえる。
タイトルは連合国が日本の戦争指導者を裁いた極東国際軍事裁判(1946~48年)の通称。「勝者による敗者の裁判は不公正」などといった、活字の記録には残っていない米国人弁護士の発言も、デジタル化でクリアに聞き取れる。
「蟻(あり)の兵隊」(同8~14日、午前10時半)は同館を拠点とする制作集団「元町プロダクション」を主宰、甲南女子大教授でもある池谷薫監督の2006年公開の作品。戦争が終わった後も中国・山西省に残留した元日本兵の一人、奥村和一さんに密着。なぜ戦闘を続けたのか、真相究明にかける姿を収めた。
3本目は原一男監督の「ゆきゆきて、神軍」(同15~21日、午前10時半)。戦争責任を追及して昭和天皇にパチンコ玉を発射したこともある元日本軍兵士、奥崎謙三氏を追う。所属していたニューギニアの独立工兵隊36連隊で、隊長による部下射殺事件があったことを知った奥崎氏は、元上官らを突然訪ねて真相を求める。その中で改造拳銃による殺人未遂事件を起こす。
池谷監督は、「嫌中・嫌韓」を支持する声など、政治や社会の右傾化が看過できないレベルにまで達している、と指摘。「いつか来た道を再びたどるのではないかと思わざるを得ない」と危機感を募らせる。世界を覆う不寛容についても触れ、「自分とは異なるものは容赦なく排除する。それが極限に達したとき戦争が起こる。これらの映画を通して戦争の手触りを語り継いでいきたい」と話している。
新型コロナ感染予防策で約30席に限定。上映は各日1回。元町映画館TEL078・366・2636