新長田の再開発、赤字300億円超 神戸市収支見込み、商業床売却進まず

2020/07/29 07:00

事業完了のめどが立ち、神戸市が再開発事業の検証に乗り出す新長田駅南地区=2019年4月、神戸市長田区

 神戸市が阪神・淡路大震災後に進めてきた同市長田区の新長田駅南地区再開発事業(20・1ヘクタール)の収支で、300億円を超える赤字が見込まれることが28日、分かった。買収地の地価の下落や、商業床の売却が進まなかったことなどが主な要因とみられる。市は、周辺の人口増に伴う税収増などの波及効果も含め、全国最大規模となった同事業の検証に乗り出す。近く有識者会議を立ち上げ、年内にも報告書をまとめる方針。 関連ニュース かつてビールの街、いまや家族連れにぎわう「住みやすい街関西1位」にも 神戸三宮の高層ツインタワー 屋上庭園に「世界一美しい図書館」 兵庫県庁再整備 隈研吾氏が参画 六甲山の緑、調和イメージ

 同事業の収支見込みが明らかになるのは、2007年以来。
 同地区では計44棟の再開発ビル計画が順次策定され、これまでに41棟が建設された。残る3棟も、23年度までに完成する予定。市は今年2月、土地買収が進まない1区画を事業対象から外し、事業が完了する見通しとなった。
 07年時点の収支見込みは、市が直接建設した28棟の収支で、赤字は92億円。加えて、市が売却を予定した221億円分の商業床が売れずに賃貸されていた。
 多額の債務を抱えた市は、08年度以降の16棟の建設を民間に委ねた。計画段階で2710億円とされた事業費は圧縮できたが、地価の下落などで収入が伸び悩み、赤字幅は3倍以上の300億円超に拡大。商業床も依然として約180億円分が売れずにいる。
 一方、高層のマンション整備で居住人口は震災前の約1・4倍の約6千人に増加しており、税収増など同事業の効果も見込まれる。市は大学教授らによる有識者会議を設置し、にぎわいづくりなどの課題も含め総合的に検証する。(石沢菜々子)
【新長田駅南地区再開発事業】 震災で壊滅的な被害を受け、1995年3月に都市計画が決定。神戸市が用地を買い上げ、再開発ビル建設が進められた。2003年に完了する計画だったが、土地の買収・売却などが難航。19年、兵庫県が県立総合衛生学院(神戸市長田区海運町)の移転を決めたことなどで全棟建設のめどが立った。

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