被爆者の体験、同世代に伝えたい 20歳の大学生オンラインで発信

2020/08/05 14:30

原爆の恐ろしさや命の大切さを若い世代に伝える池田穂乃花さん=広島市中区、平和記念公園

 広島市出身の関西学院大学2年池田穂乃花さん(20)が昨年末、同市出身の友人とともに、全国の同世代に広島や長崎の被爆体験を伝える団体「Face to Peace(フェース トゥ ピース)」を立ち上げた。新型コロナウイルスの感染拡大で現地での活動を自粛しているが、オンラインを駆使し、参加者の輪を広げている。(小谷千穂) 関連ニュース 高校の修学旅行実施はたった2割 教委が実施を後押しへキャンセル料全額補助 兵庫県 広がるオンライン修学旅行 バスガイド動画で案内 小学校教諭が修学旅行の積立金横領「自分の借金などに充てた」

 池田さんは高校生の頃、平和活動に取り組む部に所属し、広島市中区の平和記念公園でガイドを担った。大学進学後は兵庫県西宮市で暮らし、「関西でも、特に同じ若い世代に、被爆者から聞いたことを伝えたい」と同じ広島市出身の友人に声を掛けた。
 大学生や高校生5人で活動し、池田さんは共同代表を務める。当初は全国の学生らと広島で実地学習・調査をし、被爆者に話を聞く機会も設けるはずだった。3月から本格的に始動する予定だったが、コロナ感染拡大で延期に。苦肉の策として、オンライン活動に切り替えた。
 会員制交流サイト(SNS)で広く募集し、毎月1日、テレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使っての「オンライン碑めぐり」を始めた。公園内にある「原爆の子の像」など計約60の慰霊碑から、いくつかを選んで解説する。東京や兵庫などから平均20人弱の学生が参加している。
 池田さんは「物理的距離があり来られなかった人も、ヒロシマを身近に感じられるのがメリット」と活動を振り返り、「同じ世代で交流を深め、『私も勉強してみようかな』と思ってもらうきっかけになれば」と願う。団体の活動はツイッターやインスタグラム、フェイスブックで随時更新する。
■被爆者らの体験談動画公開 平和記念資料館など 訪問できない生徒に
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で被爆者の講話を聞く機会を失った修学旅行生や観光客に向けて、広島平和記念資料館(広島市中区)や市民団体などが、被爆者らの体験談を収めた動画を公開している。
 同資料館は2月末から5月末まで臨時休館。館内で行う被爆体験講話のキャンセルは7月27日時点で計899件となった。これを受けて、12人の証言者が過去に修学旅行生に向けて語った動画を公式サイトに掲載している。
 また同区のバーで毎月6日に企画される「原爆の語り部 被爆体験者の証言の会」は、3月から8月は店内でのイベントを中止。同会のホームページで生配信し、録画も見られる。
 平和活動を続けるNPO法人「ANT-Hiroshima」(同区)も動画配信サイト「ユーチューブ」で公式アカウントを始動した。6日の平和記念式典に合わせ、被爆者らの声を集めて動画で紹介する予定。理事長の渡部朋子さん(66)は「コロナに負けず、伝えたい。伝え続けなくちゃいけない」と意気込んだ。(小谷千穂)

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