ベネチア国際映画祭で監督賞の黒沢清監督 「神戸でなければ成立しない作品」の理由
2020/09/14 22:08
黒沢清監督
「ベネチアで審査員のみなさんに見てもらっただけでもラッキー。その先、賞となると、それは時の運」。自宅に受賞の報が届いたのが13日未明。午後、オンライン会見で旧知の記者に囲まれ、ほっとした表情を見せた。
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ベネチア国際映画祭 黒沢清監督「スパイの妻」が監督賞を受賞 神戸市出身
黒沢明、溝口健二、北野武ら世界的巨匠が栄誉に輝いてきたベネチア。その列にもう1人の「クロサワ」も名を連ね、「世界と接点ができたかも」。
受賞作「スパイの妻」は初めて手掛けた歴史ドラマ。太平洋戦争直前、国家機密を知ってしまった男性と妻の物語で、「スパイという設定で社会との拮抗が描けると思った」。
出身地の神戸市を舞台にしたのも初めてで、垂水区の旧グッゲンハイム邸を物語の要となる夫婦の自宅に設定。「戦前の生活が想像できる。こんな建物が日本にまだ残っていたとは」。結果的に、「神戸でなければ成立しない作品となった」と振り返る。
六甲中学・高校に通いながら、片っ端から映画を見た。立教大学で映画サークルに入り8ミリで映画を撮り始めた。そこからは周防正行、塩田明彦、青山真治ら、その後、映画界で名を成す俊英たちが巣立っていった。
今回の受賞については「スタッフと俳優の力が最高のかたちで組み合わさった結果」と分析する。
コロナ禍で製作側も興行側もさまざまな制約を受けているが、「映画は何度も危機を乗り越えてきた。その可能性は無限なのだと、この年になって実感している」。65歳。(片岡達美)