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大阪・神戸ドイツ総領事館のマルティン・エバーツ総領事=大阪市北区(撮影・冨居雅人)
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大阪・神戸ドイツ総領事館のマルティン・エバーツ総領事=大阪市北区(撮影・冨居雅人)

 「ドイツ統一の日」に寄せて

 大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館 

 総領事 マルティン・エバーツ

 40年以上にわたる苦い分断を経て、ドイツが再び一つの国家として統一を果たしてから、2020年10月3日で30年を迎えました。この喜びの日にたどりつくまでには、長くつらい歴史がありました。

 分断は、犯罪にまみれたヒトラー政権が引き起こした戦争の結果でした。敗戦後間もなく占領されたドイツは、始まりつつあった「冷戦」に巻き込まれていきました。冷戦はドイツだけでなくヨーロッパ全体を分断し、固定化した状態はいつ終わるとも知れませんでした。1950年代から60年代の、いわゆる「奇跡の経済復興」によって、西ドイツは予想以上の発展を遂げ、西ドイツの人々はドイツの歴史上かつてなかったほどの豊かさと自由を享受することができました。それに対し、東側は共産主義の支配下で、自由も豊かさもないままの時代が続きました。

 こうした現実の中で、戦後世代が育ちました。ほとんどの西ドイツ人は分断を自明のこととして、疑問を持つこともなく、それが「普通の状態」だと捉えていました。もちろん、ドイツ統一という考えは生き続けてはいましたが、それは純粋な理想論であり、はるか未来の夢物語にすぎなかったのです。私はそのような体験と、未来への見通しを持って西ドイツの小さな故郷の町で育ちました。私たちは統一を望んではいましたが、それが間もなくつかみ取れるほど近づいてきているとは、当時は思いもしませんでした。

 私たちはもう一方のドイツについて多くを知っていると思い込んでいました。鉄条網と地雷原を備えた越えることのできない、自国内の国境の、向こう側にいる同胞を気の毒に思っていました。しかし、東側の国民の中にどれほど深く自由への欲求が根付いていて、理不尽な分断を克服しようとする意志がどれほど強く存在していたのかを、西ドイツではほとんど誰も理解していませんでした。西側ではまだほとんどの政治家や評論家が、分断は長く続くと考えていたころ、東ドイツ人は時代の兆候を素早く察知し、共産主義のシステムがとっくに破綻し、崩壊寸前だということを、ちゃんと理解していたのです。

 私たちはドイツ再統一の日「1990年10月3日」を最も重要な祝日として祝い、中東欧のすべての民族の自由化運動をもたたえます。とりわけポーランド、ハンガリー、チェコとスロバキアなど、一部の国々では不法な政治体制の枷(かせ)をひと足先に振り払い始め、それがドイツ人に大きな勇気を与えました。今日、当時のことを思い返すと、これほど大きな喜ばしい転機に対する大きな感謝の気持ちだけでなく、当時私たちが経験した歴史の教訓に対する驚きの気持ちを、あらためて感じずにはいられないのです。

 その教訓のうち、現在も私の心に残っているものが三つあります。

 一つは、ドイツ人が本物の革命を成し遂げるとは、誰も思っていなかったということです。しかも完全に平和的で、一発の銃弾も放たれず、一人の人命も失われることなく。私たちは紋切り型の考えや偏見に惑わされないようにしなければなりません。どの民族も、どんな個人も、状況や前歴によってその運命が完全に決定付けられているわけではないのです。ドイツ人は再統一を成し遂げ、それを証明しました。それは私の誇りです。

 二つ目は、歴史は何らかの不動の自然法則に従っているのではなく、どんな政治体制もイデオロギーシステムも、長期的には人間的な要因を排除できないということです。人々がいつまでも欺かれ操作され続けることなどないのです。歴史は人間によってつくられます。理論や規則によってではないのです。歴史は時として大きく動き、一足飛びに変化します。そのことに対し、全ての独裁者や暴君は、現代に生きる者も含めて、不安を持っています。私たちにとって、これはとても慰めになると思います。

 三つ目は、ドイツ人の自由と権利に対する欲求が、国の統一への憧れとうまく結びついたことです。同じ一つの国の国民であるという感情は、対立的な東西のイデオロギーのどんな常套句にも勝ったのです。人は、ナショナリズムに傾倒することなく、自らの国と文化と歴史に誇りを持つことができるのです。一方で、平和と寛容への憧れもまた、同じように強く持っていなければならないことを忘れてはなりません。

 30年前のドイツ再統一の際、これらのバランスが取れたことこそが「政治的な奇跡」を起こしたのでした。そうして、ドイツ国歌の歌詞に謳われている理念、すなわち「統一と正義と自由」が達成されたのです。

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